このことは「すぐれた多国籍企業でも、その優位性はホーム地域では威力を発揮するが、他地域では通用しない」可能性を示しています。フランスの優れた企業は欧州では勝てても、同時にアジアでも北米でも勝つことはきわめて難しい、ということです。極論すれば、「世界中でまんべんなく通用する優位性」を企業が持つのはほとんど不可能、ということになります。

 もちろんこれは売上データだけの分析ですので、結果の解釈には慎重を期さねばなりません。たとえば、ホーム地域の経済規模が大きければ、それだけ企業のホームからの売り上げは大きくなります。コンシューマー向け企業とBtoB企業でも、状況は違うでしょう。とはいえ、売上というきわめて一般的な情報の単純集計からこのような結果が出たことは、当時の経営学者をおどろかすには十分でした。

 このラグマンの2004年論文以降の国際経営学は、「企業のグローバル化」という概念を盲目的に単純化させてはならない、という流れになっています。

 少なくともグローバル化は2段階に分けられるべきで、①(自国外の)ホーム地域への進出という意味でのグローバル化と、②世界中どこでも成功できる「真のグローバル化」の2段階に分けるべき、ということです。たとえば、従来の国際経営理論は②にしかあてはまらないものも多く、しかし現実にはこういう企業は世界で9社しかない、というわけです。

世界はフラット化していない

 ここで大事なことは、「世界中のどこでも、同じように」という部分です。

 確かに「絶対量」としては、国と国のあいだでモノ・カネ・人・情報などの移動は間違いなく増えています。これをグローバル化と呼ぶならそうかもしれません。しかしこのことと、「世界中どこでも、モノ・カネ・人・情報がまんべんなく行き渡る」というのは、まったく違う状況です。

 みなさんは、「フラット化する世界(The World is Flat)」という言葉を聞かれたことがあるかもしれません。2005年に米ジャーナリストのトーマス・フリードマンが刊行して世界的に話題になった本のタイトルです(日本経済新聞出版社より和訳が出ています)。

 この本でフリードマンは、ごく簡単に言えば、「国と国の経済・情報交流が進んだ現代社会では、モノ・カネ・知識・人などが同じように世界中で行き渡りつつある。世界はフラット化(均一化)している」と主張しました。これを先ほどの経営理論と合わせると、「世界はフラット化しつつあるのだから、本当に強い企業ならその強みを発揮して、世界中どこでも成功できる」ということができます。

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