さらにラグマンたちは、世界市場を「北米地域」、「欧州地域」、「アジア太平洋地域」の三極に分けました。2001年時点でこの三極を世界の主要市場と見なすのは妥当でしょう。ラグマンたちは、多国籍企業365社それぞれごとに、3地域での売り上げシェアを精査・集計したのです。

 その結果は興味深いものでした。本稿で重要なのは、以下の2つです。

 発見1.ホーム地域への強い依存:各多国籍企業の本社の置かれている地域(フランス企業なら欧州、カナダ企業なら北米)を「ホーム地域」とする。分析からは、365社のうち実に320社が、売り上げの半分以上をホーム地域からあげていることがわかった。逆にいえば、ホーム地域の外からの売り上げが半分を超える企業(=ホーム地域だけに依存しない企業)は、45社しかない。

 発見2.真のグローバル企業は9社だけ:さらにこの45社のうちで、ホーム外の2地域(フランス企業なら、北米とアジア太平洋)の両方からそれぞれ2割以上の売り上げシェアを実現できている企業、すなわち「世界の主要三地域で、まんべんなく売り上げている企業」は、9社しか存在しない。

「真にグローバルな企業」はほとんど存在しない

 この発見は、経営学者たちにとっては衝撃的なものでした。

 なぜかというと、それまでの主要な国際経営理論では、「企業がグローバル化する」とは「企業が自国以外の国でビジネスをする」という単純な概念だったからです。たとえば、あるフランス企業が優れた技術やブランドをもっていれば、もちろん現地への適応は必要とはいえ、その強みを使って米国でも、アジアでも、どの国・地域からも売り上げを増やせるだろう、と予測できました。

 しかし現実には、そのような「真のグローバル化」を実現させている多国籍企業は、2001 年時点で世界中見渡しても9社しかなかったのです。ちなみにこの9社はIBM、インテル、フィリップス、ノキア、コカ・コーラ、フレクストロニクス、モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン、そしてソニーとキヤノンです。

 たとえば、グローバル企業のイメージが強いマクドナルドは、この中に入っていません。日本を代表するトヨタやホンダも、欧州では苦戦しており、世界三地域でまんべんなくは売り上げられていません。

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