※米メタ(フェイスブック)は、14年務めたシェリル・サンドバーグCOO(最高執行責任者)が2022年秋にも退任すると発表しました。フェイスブックの今後の戦略について聞いた2011年11月17日のインタビュー記事「広がる『友人知』の世界」を再掲します。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。

(日経ビジネス電子版編集部)

 フェイスブックを社内ナンバー2の立場で支えているシェリル・サンドバーグCOO(最高執行責任者)が、日本のメディアでは初めて、本誌のインタビューに応じた。フェイスブックの今後の戦略について話を聞いた。

<span class="fontBold">シェリル・サンドバーグ氏</span><br />フェイスブック最高執行責任者。前職はグーグル。グーグル入社以前は、ビル・クリントン前大統領政権での財務官として発展途上国の債務問題に携わった。(写真:Koichiro Hayashi)
シェリル・サンドバーグ氏
フェイスブック最高執行責任者。前職はグーグル。グーグル入社以前は、ビル・クリントン前大統領政権での財務官として発展途上国の債務問題に携わった。(写真:Koichiro Hayashi)

 フェイスブックが目指す世界に注目が集まっています。

 今、インターネットは変革期を迎えています。「情報主体のウェブ」の世界から「ソーシャルウェブ」の世界へと転換しつつあります。

 情報主体のウェブの世界は比較的イメージしやすいのではないでしょうか。皆さんはとにかく検索エンジンで情報を探し出そうとしますよね。特定のトピックや特定の情報を探し回ります。私もニュースを探しますし、天気予報を見たりもする。要するに、同じように検索すれば誰もがウェブサイトから同じ情報を得られる世界です。その世界において、ユーザーは名前がない架空の人物のようなものです。

 一方、ソーシャルウェブはこれとは全く異なる世界です。ユーザーは本人でなければ意味がありません。自分がいて、あなたがいる。そして特定のトピックを探したりはしません。その代わり、自分の周囲の人たちが何を言っているのかに耳を傾けるわけです。

 私が「みんなどう? 元気にしている?」と言えば、私の母が応え、フロリダに住んでいる弟が応え、友人が応えてくれる。企業からも反応があるかもしれません。ソーシャルウェブの世界は、実際に身近に起きている出来事をシェアし合う世界なのです。

 情報主体のウェブは「集合知(群衆の英知)」という考え方に基づいています。これは依然として重要な考え方ですが、今後、さらに重要になるのは「友人知(wisdom of friends)」です。

 例えば、私が東京に行くときに欲しいのは東京に住んでいる友人からのお薦め情報。集合知から友人知への移行とはつまり、私たちがどうやって情報を収集するのかという根本的な原理が変わってきているということを示しています。

 なぜか? 理由は簡単です。人は元来、自然に状況を受け入れながら暮らしているからです。街角やオフィスで友達を見かけたら、何か特別な質問を投げかけるのではなく「元気?」と聞くでしょう。これと同じことで、人が何か特定のことを探し出そうとする時間は生活のほんの一部です。実際は周囲の人々と自然にコミュニケーションすることに、ほとんどの時間を費やしています。

 フェイスブックの利用は、現実の世界で周囲と反応し合うことと同じです。意識的にやる行為ではないのです。

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