
60歳を過ぎて会社に残って活躍できる人、退職後に他社でも活躍できる人、「シニアでも引っ張りだこ」の人には大きく3つの共通項がある。
まず筆頭に挙げられるのが「目線の低さ」だ。
「ボクはこう思うけど、どうだろう」「これをやっておこうか」。大手建設会社の海外営業部門で参与として働く山下正治さん(仮名、64歳)は、職場で言葉づかいに気を遣う。60歳定年を機に営業部長からプレイヤーとなり、元部下が上司になった。
山下さんは海外営業畑30年、10年以上の海外駐在経験があり、英語とスペイン語を操る大ベテランだ。しかし、偉そうなそぶりは一切見せない。「年寄りのほうこそ、気配りをすべき」が持論。ただでさえ、シニア社員は使いにくいと思われがち。過去の成功体験をふりかざしたり、元部長のような振る舞いをしたりするのは禁じ手だという。
山下さんの会社では60歳以降は単年度契約の嘱託社員で、A、B評価でないと契約が更新されない。職場で煙たがられては終わりだという。
2013年から、改正高年齢者雇用安定法の施行により希望すれば65歳まで働けるようになった。とはいえ、定年で肩書きがはずれても「上司風」を吹かせる人は、職場で浮いてしまう。「俺にそんな仕事をやらせるのか」「そんな給料もらってないぞ」と威張るシニア社員は次第に居場所がなくなり、65歳を前に自ら辞めていくケースもある。
監査役を退き、ハローワークに足を運ぶ
定年後、どこかの会社で役員でもできないか。会社員の多くが夢見る転身を果たした鈴木洋介さん(仮名、64歳)。大手素材メーカーの子会社監査役を退いた後、ITベンチャー企業の監査役に就いた。鈴木さんの再就職を成功させた鍵もまた「目線を下げたことだ」。
前職を退いた後、日本監査役協会やヘッドハンティング会社に登録する一方、ハローワークや区役所にも頻繁に足を運んだ。無料のカウンセリングや講習を何度も受けたという。「大企業の看板を自分の実力と思ったら大間違い。自分の力で何ができるか見つめ直そうと思ったんです」。いざとなったら、月収20万円の区役所のパート職員に応募しようと考えていた。健康なうちは年金をもらわずに働きたいと考えたのだ。
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