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成功したいなら営業体験をしろ

 真面目に社労士資格取得のために受験勉強をして、開業を目指す会社員の多くは、経理や総務、人事など企業の間接部門で働く方が多い。しかしそういった人は、開業前に1年でいいので営業職をリアルに体験することをお勧めする。例えば勤めている会社で営業部に異動願いを出す。又は合格後、派遣でもアルバイトでもいいので営業として働いてみる。特にフルオミッションの飛び込み訪問販売などはいい。その度胸と図々しさが身につけば、国家資格の権威がのちに必ず役に立つはずだ。

 実際に『社労士絶対成功の開業術・営業術 開業1年目で年収1000万円を達成する!!』(インデックス・コミュニケーション)の著者で人事コンサルタント兼、社会保険労務士の内海正人氏は開業前、総合商社の子会社で法人営業や債権回収業務に従事していたという。また、『女性社労士 年収2000万円をめざす』(同文舘出版)の著者である長沢有紀氏も独立前に信託銀行の窓口業務でトップセールスを記録した経験があるそうだ。この2人は筆者の古くの友人だが、そのバイタリティーと人間力は、国家資格を持っていなかったとしても十分ビジネスで成功する器である。

 それでも「営業経験はないし、今さら営業のバイトなどやりたくない」という方は、専門のコンサルティング会社が主催するセミナーや研修を受けるなど、最低限のマーケティング知識や営業ノウハウ、そしてコンサル・スキルを開業前に身につける必要があるだろう。

 ちなみに社労士資格は独立・開業しなくとも企業内で「勤務社労士」として活動することもできるが、日本の会社の多くを占める小規模企業や零細企業では、転職の際、社労士資格はプラスにならず、むしろマイナスに評価されることもあるという。労働基準法などに詳しい社員は、経営者として、上司として「扱いづらい」というのが本音なのだそうだ。やはり、社労士資格を取得したならば、開業の道を目指すのが得策であろう。

 社労士について、やや悲観的に書いてきたが、先の内海氏はこう言う。「世間では社労士は儲からないとか、食っていけないなんて言われているようだが、そんなことはない。私の周りの同業者はそれなりに稼いでいるし、私だって地価の高い西新橋にオフィスを構えて社員も雇っている。それに中小企業の社長から、トラブルを解決してくれてありがとうございました、先生のお蔭です! などと心から喜ばれるこの仕事に、私は誇りを持っている」。このように、リアルに活躍し、その仕事に使命感を持っている社労士の方も多くいるのも事実だ。

 使命感のある方が、国家資格である社労士を目指すのは適している。ただし、使命感だけでは、上記の稼げない社労士となることが目に見える。営業力とバイタリティー、そしてコンサル・スキルを身につけることが必須なのだ。

松尾昭仁(まつお・あきひと)
士業・コンサルタント専門の独立・起業アドバイザー
ネクストサービス代表取締役
大学卒業後、業界大手の総合人材サービス企業を経て、コンサルタントとして独立。自身が企画し講師を務めるビジネスセミナーの参加者は延べ8000人を超え、その中から400人以上の各種講師や、100人を超えるビジネス著者を世に送り出す。著作は20冊。執筆した本は中国、韓国、台湾、タイ王国でも翻訳出版されている。京都女子大学などの高等教育機関、東京商工会議所を初めとする各種団体やリクルート、明治安田生命などの民間企業より講演・セミナー、研修依頼を受ける。主な著書は『稼ぎ続ける人の話し方 ずっと貧乏な人の話し方』 (青春文庫)、『コンサルタントになっていきなり年収650万円を稼ぐ法』(集英社)、『セミナー講師で稼ぎたいと思ったら読む本』(KADOKAWA 中経出版)など。

 (この記事は日経ビジネスに、2014年11月20日に掲載したものを再編集して転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。)