辺境地域の住民に許された独特の自由貿易なのか、顔なじみは別のところでまとめて管理しているのか、それも分からない。辺境地帯の緩いルールの中の混沌。それでも、近くにある物流センターに行くと、国境貿易の拠点として機能している様を実感できた。大型トラックが50台も入れば埋まってしまいそうな広さだが、トラックの出入りや荷の積み替えで、人々がせわしなく動き回っていた。

 扱う貨物は輸出入ともに果物を中心とした農産物で、熱帯の果物がベトナムから来る一方、中国から梨や桃などを輸出している。農産物以外では、雑貨や玩具などの軽工業製品も中国からベトナムに向けて輸出されている。

 ベトナムと中国の間では、車両が相互に乗り入れる取り決めがない。そこで、運用上、こうした国境近くの物流センターまで車両は越境して乗り入れ、そこで荷物を積み替えている。なるほど、ざっと見渡したところ、この物流センターに停車しているトラックのナンバープレートは中国とベトナムが半々くらいである。

 ただ、日系メーカーが浦寨ゲートを使うことはまずないだろう。この国境では電子部品などの通関はしておらず、付加価値の高い工業製品は設備の整った友誼関を通すことになっているからである。友誼関向けにも同様の物流センターがあると聞き、足を延ばした。友誼関から8kmの南友高速沿いに巨大な物流センターが姿を現した。

友誼関から8kmのところにある巨大な物流センター「東南アジア諸国連合(アセアン)自由貿易区憑祥物流園」
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 総投資額の予定は約170億円で、120万m2を見込むこのセンターは南友高速の開通と同時に一部が完成した。民間企業が運営する形を取っているが、政府の肝いりであることは間違いない。何よりセンターのゲートに大書された名前がふるっている。「東南アジア諸国連合(アセアン)自由貿易区憑祥物流園」である。

 事務所棟の前には中国国旗と並んでアセアン各国の国旗がはためいている。経済の一体化を目指すアセアンに対し、友誼関を結節点として積極的に関与していく中国の対外経済政策の決意表明にも映る。友誼関の交通量と同様、センターの駐車場もガラガラだったが、ここをトラックが埋め尽くすようになった時、中国とアセアンの経済は今と比べものにならないくらい太いパイプでつながれているのだろう。

陸と海とイベントの経済外交

 友誼関からベトナム国境の山道を南東方向に走ること4時間余り。南シナ海につながる北部湾にある防城港市は国境こそないが、大型貨物船が着岸できる国際港を持ち、世界各国とつながっている。岸壁にはタイやベトナムなどアセアン各国のほかロシアの大型船も停泊し、船に荷を積むクレーンが60基以上ずらりと並んでいた。

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友誼関から約200km南東の海沿いにある東興市。国境の川を渡ればベトナムで、付近は観光客向けの物売りで騒然としている
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