しかし今では、工場の集中により、労働力不足や人件費の高騰、電力不足などが問題になっている。外資系メーカーの中で始まっているのが、東南アジアなどの別の国に新拠点を設けてリスク分散を図る「チャイナプラスワン」の動きだ。中国より人件費が安いベトナムはその有力候補の1つである。

 キヤノンやブラザー工業などがハノイの郊外に組み立て工場を持っているが、ベトナムではまだ部品産業が発達していないため、多くの部材を香港や深センから最低1週間かけてコンテナ船で送っているのが実態である。物流在庫を減らしたい企業にとって、この無駄な時間は頭痛の種だった。

 友誼関を通って中国とベトナムを結ぶ“越中街道”はそんな問題を軽減する可能性を秘めている。まだテスト営業の範囲を脱していない規模だが、両地域をつなぐ物流は始まっている。例えば、郵船航空サービスの混載トラック便は毎週1便で、香港~ハノイを正味3日、深セン~ハノイを同2日で結ぶ。運賃は船便の3~4倍するため、ベトナムに進出したメーカーにとって緊急輸送手段の1つに過ぎない。だが、東南アジアとのつながりを深めようと考える中国にとっては大動脈の1つである。

荷物も調べない辺境の混沌

 広西チワン族自治区の区都である南寧と友誼関を結ぶ「南友高速」は片側2車線で、全線開通から2年足らずの快適な道だ。以前は一般道路260kmを8時間以上かけて走っていたところが、今は180kmに短縮され2時間で走破できる。一方、ベトナム側はハノイまで一般国道で同じく180kmの道のりで、3~4時間の行程となる。

 物量が増えれば輸送コストが下がり、越中街道の使い勝手は上がるというのが各メーカーの期待する皮算用だ。時間とコストをにらみつつ、緊急輸送手段から常用手段への切り替えのタイミングを計っている。

 国家プロジェクトに基づく友誼関とは別に、憑祥には地元住民の生活に密着した国境ゲートもある。友誼関から国境沿いに山道を2kmほど移動したところにある浦寨ゲートだ。個人商店がひしめく卸売りの町と一体になった国境は、10年以上前から変わらぬ光景で人や物が行き交っているのだろう。

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友誼関から約2kmのところにある浦寨国境ゲート。リヤカーや自転車による越境者も多い。物流センターに出入りするトラックは中国車とベトナム車がほぼ半々
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 トラックに交じって行き過ぎるリヤカーや自転車。時には段ボール箱1つを背負って徒歩で国境を越える「運び屋」もいる。国境の両側では、自転車やオートバイ、3輪オートバイのタクシーが客や貨物を待ち受ける。不思議なのは、リヤカー程度なら国境の警備員は荷物や身分証の類をろくにチェックしていないように見えることだ。

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