※この記事は日経ビジネスオンラインに、2009年7月8日に掲載したものを転載したものです。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。

2007年8月20日号より

 原材料を持ち込む加工貿易、越境してくる外国人に商品やサービスを売る辺境商売――。深センなど華南地方で成功し、中国経済が急成長するきっかけとなった成功パターンが最北端の地に移植されようとしている。今後数年間で開発区や国境越えの橋が整備される計画だ。


 中国の最北端に近い街、黒竜江省黒河市ではこの日、日中の最高気温が30度近くまで上がった。ロシア国境を流れる黒竜江(ロシア名:アムール川)の河畔は水遊びや魚取りを楽しむ多くの家族連れでにぎわっていた。

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 川幅は最も狭いところで750m。対岸にあるアムール州の州都、ブラゴベシチェンスク市はすぐ目の前である。中国とは違う様式の建物が対岸に並び、水辺では日光浴や水遊びをする人たちの姿も肉眼で見ることができる。

 夏真っ盛りの今は想像しにくいが、この一帯は冬、最低気温が零下30度を下回る。1年のうち約5カ月、川の表面は硬い氷で覆われ、国境越えの足としてバスやトラックが使えるようになる。秋と春の氷が薄い時期は、船も車両も使えなくなるためホバークラフトが国境の足だ。

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 この街は北緯50度線にある。北海道の稚内の北、サハリン島(樺太島)の中心部と緯度がほぼ同じと言えば、少しはイメージがわくだろうか。

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 中国とロシアの国境線は総延長3600km余り。その上に点在するいくつかの国境ゲートで貿易は営まれており、黒河の対ロシア貿易額は年間約720億円で第3位である。1~2位の都市は黒竜江省のより日本海側にあり、ウラジオストクなど大都市に近い場所にある。

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