3月10日から映画「Winny」が公開となり、金子勇氏が開発したファイル交換ソフト「Winny」を巡る訴訟の経緯が再び注目を集めている。
金子氏が京都地裁で2006年12月に有罪判決を受けた際に語った2007年1月15日号「敗軍の将、兵を語る」を再掲し、日本のソフトウエア開発に与えた影響を振り返る。金子氏側は大阪高裁に控訴して逆転無罪の判決を受けた。これを不服とした検察側は最高裁に上告したが、最高裁がこれを棄却。11年12月に金子氏の無罪が確定した。13年7月、金子氏は急性心筋梗塞により42歳で亡くなった。(日経ビジネス編集部)

ファイル交換ソフトの開発者が著作権法違反幇助(ほうじょ)で有罪判決を受けた。ソフトのせいにされがちな情報漏洩と同じ誤解があると開発者は主張。ソフト開発に悪影響を与えることになると控訴した。
ファイル交換ソフト「Winny」開発者

2006 年12 月13 日、私は京都地方裁判所で著作権法違反を幇助した罪で罰金150 万円の有罪判決を受けました。
私が開発したファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を使って、ゲームソフトや映画の違法コピーをしていた人が逮捕されました。著作権侵害を容易にしていたのを認識しながら、ウィニーの開発を続け、ホームページで最新版を公開してきた。そのことが、悪用者の犯行を幇助した罪に当たると判断されたわけです。
インターネットの否定
ウィニーを巡っては、情報漏洩騒動が相次ぎ社会問題となりました。海上自衛隊の隊員のパソコンから国家機密を含むデータが漏れたり、企業からも顧客情報の流出が相次いだりしました。世間的には、ウィニーそのものがコンピューターウイルスと勘違いされているのかもしれません。
ウィニーは、インターネットを通じてパソコンの中にあるファイルを交換するソフトです。サーバーを介さずに、直接パソコン同士でデータをやり取りするPtoP(ピア・ツー・ピア)という技術が使われています。匿名性の高さに加え、データ交換の効率が高いことが支持され、利用者は数十万人にまで増えました。
そもそも、情報漏洩はウィニーのせいで起きるのではありません。外に出してはいけない情報を、自宅などに持ち出した時点で情報は漏洩していると言えます。たまたま自宅のパソコンにウィニーをインストールしてあり、そのパソコンがウイルスに感染していた場合に情報漏洩が発見しやすくなる。ただ、それだけの違いなのです。
だから、ウィニーによる情報漏洩はメールで情報が外部に流れてしまうのと全然変わりません。やろうと思えば、機密情報をコピーして物理的に運び出すことだってできる。ですから、情報漏洩問題とウィニーは切り離して考えなくてはいけないのです。それなのに、現実は全部一緒くたにされてしまっています。
著作権侵害の幇助についても、議論がゴッチャになってしまっています。実態として、ウィニーを使って音楽や動画といった他人に著作権があるデータのやり取りが行われていました。それで検察は、ウィニーは著作権侵害の道具なんだから、私が幇助したというストーリーで攻めてきたのです。
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