※2015年10月31日に日経ビジネスオンラインで公開した記事を再掲載しました。記事中の肩書きやデータは記事公開日当時のものです。

阿蘇山、箱根山、御嶽山など、このところ活発化しているように見える日本の火山だが、本当はどうなのか。2011年の東北地方太平洋沖地震の影響は?富士山は?そして、火山についていまどこまで分かっているのか――。地震や地殻変動の観測をもとに地下の現象を解明し、火山防災に取り組み、噴火の予知を目指す藤田英輔さんの研究室へ行ってみた!

(文=川端裕人、写真=藤谷清美)

 火山の噴火には様々な種類がある。

 「水蒸気爆発」「カルデラ噴火」など、このあたりで整理をしておいた方が良さそうだ。藤田さんに教えてもらおう。

噴火は3種類

「マグマがどの程度、上がってきたかによるわけです。水蒸気爆発というのは、マグマがわりと地下水面近くに留まって、地下水を間接的に熱して、それが高温高圧になって爆発するものですね。噴火の中では比較的小規模です。2014年の御嶽山の噴火や箱根で想定されているものです。しかし、マグマと水が直接接するところまでマグマが上がってくると、マグマ水蒸気爆発というのが起きて、これの方が大規模になります。2015年の口永良部島の噴火がそうだったとされています。そして、マグマが直接噴火するのが、マグマ噴火です。これは国内では桜島や浅間山、海外ではハワイやエトナ山などが有名です。大きな噴火になりがちです」

火山噴火の種類。左から水蒸気爆発(2014年御嶽山)、マグマ水蒸気爆発(2015年口永良部島)、マグマ噴火(ハワイのキラウエア火山など)。(提供:藤田英輔)
火山噴火の種類。左から水蒸気爆発(2014年御嶽山)、マグマ水蒸気爆発(2015年口永良部島)、マグマ噴火(ハワイのキラウエア火山など)。(提供:藤田英輔)
[画像のクリックで拡大表示]

 基本的な噴火の仕方でも、マグマの熱が間接的に伝わった水蒸気爆発、マグマと水が接触して起こるマグマ水蒸気爆発、そして、マグマが直接噴出するマグマ噴火があるという。この順番に噴火規模は大きくなる。噴火規模とはこの場合、噴出物の量で定義されるのが一般的だそうだ。そして、カルデラ噴火は、通常のマグマ噴火よりもはるかに巨大で、地形を大規模に変えてしまうほどの破局的な噴火だ。(後述)。

 最近の火山の科学は、噴火の直前の予兆は見つけられる水準に達している。「終わりが予測しにくい」という弱点はありつつも、すでに「実用」の域に達している。実際に、口永良部島の噴火は、観測が防災につながった最近の事例だ。

 しかし、さきほどの噴火の「分類」の中で、一番規模が小さな水蒸気爆発と、一番巨大なカルデラ噴火については、予測しがたいのだそうだ。

次ページ 少しずつ理解していく