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(写真:shutterstock)

 2019年11月、中国キャッシュレス決済大手「支付宝(アリペイ)」が外国人向けサービスを始めた。これまで中国を短期的に訪れる外国人はアリペイや「微信支付(ウィーチャットペイ)」といった、中国で一気に普及したキャッシュレス決済を使うことができず不便だった。

 中国政府はここ数年、外国人観光客をさらに呼び込もうとしており、今回のアリペイの新サービスもその延長線上にあるものだ。

 具体的なサービスの仕組みは以下の通りだ。

  1. アリペイはサービスのために「ツアーパス(Tour Pass)」というプログラムを用意
  2. 中国の上海銀行はツアーパスのために、最大で2000元を預け入れることができるバーチャルプリペイドカード。このカードはツアーパスを使う際につくられるもので、他の目的には使えない
  3. 利用者は海外クレジットカードからバーチャルプリペイドカードに入金する。未使用分は90日後に返金される

 このように、かなり大がかりなシステムであることが分かる。アリペイはこれまで中国国内の銀行口座でないとひも付けできなかった。現在は旅行者など短期滞在の外国人が中国の銀行口座を開設することは難しく、仕事などで中国に長く住む人以外は利用が困難だった。

 ツアーパスでは、通常とは異なる専用のウォレットとそれにひも付く専用の仮想的な口座を設けることで、短期滞在の外国人でも利用できるようにした。システム開発の手間はもちろん、中国の銀行や国際的なクレジットカード会社を巻き込んだ新たな仕組みだけに、すり合わせは大変だったはずだ。もちろん中国の金融当局との折衝もあっただろう。

 アリペイを運営するアントフィナンシャルを題材にした書籍『アントフィナンシャル 1匹のアリがつくる新金融エコシステム』(みすず書房)には、プロトタイプを大胆に市場投入しながら改良していく同社の素早い開発体制がリポートされている。今回のツアーパスのサービスにも、同社ならではの速度と新しいものを生み出す精神を感じる。

 外国人向けの施策を打ち出しているのはアリペイだけではない。シンガポールのユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)は中国国内で通常よりも簡単に外国人向けの口座開設ができると公表している。

外国人口座の開設に関するUOBの発表

 中国で外国人が銀行口座をつくる際には中国国内の携帯電話番号、居留許可の写し、就業証明などが求められる。特に就業証明が高いハードルになる。今回の記事を見る限り、UOB銀行は中国以外の電話番号しか持っていない外国人に対し、海外での身分証や収入証明などで口座開設を許可してくれるようだ。本当ならありがたい話だ。

 筆者が考えるに、中国のサービスを外国人が使う際のハードルは1.中国語、2.中国の携帯電話番号、3.中国の銀行口座になる。