CEOやマネジャーも積極的にプログラミングに参加
大卒以上の高学歴のエンジニアが多いこともあり、オープンソース活動に参加している人々の年収は高めだ。中国の水準では高収入といえる月給1万5000元(約24万円)以上3万元未満を稼ぐエンジニアは59%、3万元以上5万元未満が14%、5万元以上が6%と、5000~1万元程度が多い工場労働者よりも高い。年齢が若くて収入が高い「エリート」が多いといえるだろう。

オープンソース活動の参加者に対して、職業についても聞いている。職業別で見るとプログラマーの他にマネジャーやCEOもコードを書いていることが分かる。参加者の給与水準が高いのは、こうした要素も影響しているだろう。
プログラマーは約51%と半分程度で、マネジャーなど管理職やCEO(最高経営責任者)、スタートアップ創業者などもコードを書いている。プログラマーに限らず様々な職業の人たちがコードを書いていること、開発と企画やマネジメントとが分断されていないことは、システム開発に良い結果をもたらす。
オープンソース活動はボランティア
高収入でビジネスへの才覚もありそうなコミュニティー参加者が多い一方で、オープンソース・ソフトウエアのプログラミングからは収入を得ていない参加者がほとんどだ。

2020年の中国オープンソースカンファレンスでは、大手ソフトウエア企業各社が社内にオープンソースの推進部署を設け、会社全体でオープンソースを推進していく様子が見られた。一方で19年のこの調査では、過半数がオープンソース活動からは収入なしとしており、極めて少ない16%を加えると69%の参加者が収入がないか、大した収入を得ていない。
白書では、識者の「オープンソースのビジネス活用は、中国では未発達で、大きな課題である」とのコメントが掲載されている。今は急速にオープンソースのビジネス活用が進む中国だが、ビジネスが立ち上がる前から熱意のある開発者がコミュニティーへの貢献を続けていることには大きな意味がある。
オープンソース活動の隆盛は中国社会に余裕が出てきた証し
自分自身のスキル向上や世界的なプロジェクトへの興味ややりがいを目的に、オープンソース・ソフトウエアへの貢献を続けることは世界中で見られる現象だ。
全体的に若くて学歴が高く、収入も多い優秀な人たちが、金銭的なリターンが少ないにもかかわらず積極的にオープンソース・ソフトウエアの開発に参加しているのは、中国社会に余裕が出てきて、人々の考え方が変わってきたことの証しでもある。アンケートには今後のオープンソースコミュニティーに期待することなどの項目もあるが、知識をシェアしてより優れたソフトウエア開発を可能にすることへの期待が高い。
こうした自発的な開発者たちの思いは、ちょうどメイカームーブメントやDIYのボランティアたちにも似ている。中国政府はメイカームーブメントに対して15~17年に大規模な投資を行い、巨大なバブルとその後の崩壊を招いた。20年に中国でオープンソース関連のカンファレンスが開催されたことや政府主導によるオープンソース推進のための組織が誕生したことを考えると、メイカームーブメントのようなバブルの再来を予感させる。中国でのオープンソース運動が今後どう発展していくかはこれからも注視していきたい。

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