10月26~27日の2日間、台北の華山1914文化創意産業園区で、DIYの祭典「メイカーフェア台北2019」が開催された。会場は台北市内の中心部にあり、同会場で他のイベントも数多く行われていた。

 昨年に比べてイベントのスペースは2~3割減ったが、有料イベントであるにもかかわらず終始会場は来場者でいっぱいで、メイカーフェアが台北にしっかりと根付いていると感じた。

台北市内の中心部にありながら緑にあふれ、多くのカルチャーイベントが開催されている華山1914文化創意産業園区。集客には非常に有利な場所だ

 製造業が主要産業となっている台湾では、政府がメイカームーブメントの促進に大きな投資をしている。16年には台北、台南、新北、新竹と4カ所でメイカーフェアが開催された。

 さらに各地にデジタル工作工房「FabLab」のようなメイカースペースを整備した。中国大陸と似た政府主導の促進策だが、大陸と比べるとソフトランディングしたようだ。現在メイカーフェアは台北だけでの開催になっているが、イベントが名称を変えて続いていたり、メイカースペースが活動を続けたりしている。そういった意味で台北のメイカーフェアは「メイカービジネスの現在地」を考える良い機会になった。

 クリス・アンダーソンの著書『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』(NHK出版)は、これまでの産業のあり方を変えるものとしてメイカームーブメントが取り上げられている。2012年の同書籍の発売当初は、メイカームーブメントが製造業の大量の雇用に影響を及ぼすと考えられていた。製造業は確かに米グーグルなどのWebサービス開発よりも大量の雇用を生む。

 しかし、労働集約的な産業が先進国に回帰する大きな動きは今のところ起きていない。米中貿易摩擦や人件費の高騰の影響があるとはいえ、中国の工場は今も健在だし、ベトナムなど新興国の製造業は拡大を続けている。一方、米国に新たな工場を建てる動きはまだ限定的だ。

 その一方で「ハードウエアの研究開発」は世界中に広がった。「世界の工場」といわれた深センを中心とする珠江デルタ地域のEMS(電子機器の受託製造サービス)企業を活用した、小ロットのハードウエアの開発がどの先進国でも盛んになり、ソフトウエアと同様、IoTハードウエアの開発も1つの産業になっている。IoTハードウエアの開発はソフトウエア開発に近く労働集約型ではなく研究開発型だが、開発者が増えているのは間違いない。

台湾の「物聯網智造基地」。中国語ではIoTを「物聯網」と訳す。

 台北メイカーフェアでは、デジタルトランスフォーメーションを促す政府の外郭団体が設立した、IoTの促進機構「物聯網智造基地」が大きなブースを設け、新しい無線通信の開発ボードやネットワークについての議論を繰り返していた。このようなメイカーフェアと産業界との結びつきは、東京よりも台北の方が強いかもしれない。

続きを読む 2/3 メイカームーブメントで教育が変わった

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