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(写真:Shutterstock)

 欧米を中心に始まったオープンソースのムーブメントは、今や全世界に広がっている。人気のプログラミング言語「Ruby」は日本人のまつもとゆきひろ氏が開発したものだが、Ruby普及に大きな役割を果たしたフレームワークの「Ruby on Rails」はデンマーク人のプログラマーが中心になって開発したもので、世界中から参加できるオープンソースソフトウエアのエコシステムの中で発展が続いている。世界で最も多く使われているサーバーOS(基本ソフト)「Linux」のアップデートに近年最も貢献しているのは華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)などの中国企業だ。

深圳に本社を置く開源社は、中国発のオープンソースリポジトリ「Gitee」を運営し、中国オープンソースカンファレンスを開催している

国家の争いがオープンソースの世界に持ち込まれる

 オープンソースソフトウエアの共同開発を助けるプラットフォーム「GitHub」が、紛争を理由にイランやシリアなどへのアクセスを遮断したことは、特に米国以外に住むオープンソース開発者を驚かせた。GitHubは2018年に米マイクロソフトが買収したため、米政府の影響を受ける。イランへのアクセス遮断は、政府の意向により特定の国をブロックすることが、今後もあり得ることを意味する。

 中国では、深圳に本拠を置く開源社が主体となって「Gitee」というGitHubの代替サービスの運営が始まった。開源社は「ファーウェイもアリババも オープンソースが根付き始めた中国」でも触れた中国オープンソースカンファレンスの主催企業でもある。騰訊控股(テンセント)も「Codie」という、オープンソースによる統合開発サービス「GitLab」の代替サービスを開始した。

 多くの人に開発に参加してもらいソフトウエアを発展させるのがオープンソース方式の目的なので、こうした分断は苦々しく思うが、多くの国の開発者が、オープンに開発を続けられることが最も重要である。GiteeもGitHubと同じオープンソースライセンスを採用している。オープンソースは、GitHubかGiteeか、米国か中国かを超えた世界的な流れであり、新しいプラットフォームができることでこれまでより開発者が増えるなら喜ばしいことだ。

中国から世界の波に乗るアリババとバイドゥ

 中国からも「Vue.js」のように、世界的に利用者が多いオープンソースプロジェクトも出てきている。中国企業の世界的な存在感に比べるとまだ寂しい状況だが、ムーブメントが始まっているのは間違いない。

 中国企業の中でGitHubへの参加が目立つのはアリババ集団と百度(バイドゥ)の2社だ。GitHubでのリポジトリ公開数はアリババが約1500、バイドゥが約900と他を圧倒して多く、後述するテンセントやファーウェイは200程度なので、数倍になる。

 分野としてはAI(人工知能)と、ブロックチェーン含む金融分野が多い。これは世界中で開発者が多い分野だ。GitHubなど既存のプラットフォームを舞台にするのは当然の選択だろう。