一方で、アリババがGitHub上で公開している「ant.design」はスターを6400個集める人気のオープンソースソフトウエアだが、コメントの多くは中国語だ。

 このソフトウエアはブラウザー上でのインターフェース作成を助けるキットだ。ウェブ画面を作成する際に作るのが煩雑なグラフやレイアウトなどを整えてくれる部品が集まっている。アリババのサイトではもちろん多く使われていて、このキットを使うと少し似たような見た目になる。中国からの利用が多いようだ。世界に開いたプラットフォームでソフトウエアを公開しても、やはり言語の問題はある。Linuxの開発者リーナスはフィンランド人だが、ドキュメントは母語のフィンランド語でなく、すべて英語で書いている。

アリババが公開している「Ant Design」。ブラウザ上で動くUIのデザインを助ける
アリババが公開している「Ant Design」。ブラウザ上で動くUIのデザインを助ける
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GitHub上でソフトウエアに対して寄せられるissue(不具合報告や改善要望)も、中国語が目立つ。
GitHub上でソフトウエアに対して寄せられるissue(不具合報告や改善要望)も、中国語が目立つ。
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IoTを舞台に伸びる中国発オープンソースのプラットフォーム

 組み込みやIoTの分野はハードウエアとの結びつきが深く、多くの情報はハードウエアの開発元企業にある。そうした情報をシェアしてエコシステムをつくっていこうとするオープンソースハードウエアの動きも発展しているものの、ソフトウエアに比べるとその速度は緩やかだ。GitHubほか欧米のプラットフォームで公開されているものも、ソフトウエアほど多くはない。

 オープンソースなハードウエア開発の中心地は中国にある。その中で、中国巨大テック企業はIoTに対して多大な投資を行い、組み込みOSを公開している。アリババの「AliOS Things」、テンセントの「TencentOS Tiny」、ファーウェイの「Harmony OS」(組み込み版)など、各社のIoT開発を促進するOSはすべてオープンソースとして公開されている。

 この分野では開発者も圧倒的に中国に多く、ドキュメントもまず中国語版がつくられることが多い。そうなるとGitHubでなく、中国発プラットフォームのGiteeが使われるのは自然な流れだ。

 ハードウエア以外にも、アリババのクラウドに追加されるソフトウエアやテンセントの「ウィーチャット」内のミニプログラムなど、開発者も利用者も中国国内が中心の場合も、Giteeをプラットフォームとしてオープンソースで開発するだろう。

 このように、中国発で現状は主に中国人の間で利用されているソフトウエアがGiteeなど中国発のオープンソースプラットフォームで公開され始めている。Giteeは中国語ベースでオープンソース開発をしたい人たちを助ける、価値あるサービスとなっている。

Gitee上に公開されている、ウィーチャットミニプログラム関連のオープンソースソフトウエア
Gitee上に公開されている、ウィーチャットミニプログラム関連のオープンソースソフトウエア
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 中国オープンソースソフトウエアカンファレンスでキーノートスピーチを披露した米アパッチソフトウエア財団のクレイグ・ラッセル氏は、「今はアパッチ関係のコミュニケーションは英語が公用語だが、機械翻訳などでより多言語に対応していきたい」と語った。Giteeと中国語も同じ問題を抱えている。Giteeで誕生したオープンソースのエコシステムが、世界に向けてどう発展していくのかは、インドや日本など、多くのオープンソース開発者を抱える国にとっても注目すべきテーマだ。

この記事はシリーズ「「世界の工場」の明日」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。