筆者が住んでいる中国の深センはハードウエア製造の中心地で、「ハードウエアスタートアップの聖地」と呼ばれることもあり、中国全土、世界各地からハードウエアのスタートアップが集まってくる場所でもある。

 全天周カメラのInsta360やドローンのDJI、ロボティクス教育ツールキットのMakeblockなど、多くのスタートアップが深センで創業している。世界中でスタートアップが脚光を浴びる中、DJIのような成功を収めたスタートアップを目指して、米国で教育を受けた中国人エリートが深センで起業するといったケースが増えている。

 ただ、実際に新製品を生み出しているのは、これまで大企業などから開発や製造を受託して製品を作ってきたOEM(相手先ブランドによる生産)企業であることも多い。

クラウドファンディングサイト「Indiegogo」で350万ドルを超える調達に成功した小型コンピューター「GPD Pocket」シリーズも、OEM企業が生んだ新製品だ。開発したGPD TechnologyはゲームコントローラーのOEMを得意にしていた

 会社は支払いができなくなった時につぶれる。商品が売れなくても、手元に資金が残っていれば事業は継続できるし、商品が売れていても支払うべきものを支払うことができなければ倒産する。

 ソフトウエアを自社開発しているスタートアップの場合、出ていくお金は少ない。自分たちの食いぶちだけを確保し、会社に泊まり込んでサービスがヒットするまでがんばるといったストーリーは多くのソフトウエアスタートアップに共通している。

 ハードウエアスタートアップの場合、このようなストーリーは成立しない。工場には代金を先払いして製品を製造してもらう。一方で、製品を販売してお金が入ってくるのはずっと後になる。こうした資金繰りの難しさに加えて、輸送、販売店との交渉、返品・交換など、製品そのものが良くても別の落とし穴にはまるケースは多い。「Hardware is Hard(ハードウエアはハード)」と言われるゆえんだ。

 スタートアップに厳しいハードウエアビジネスでは、OEM企業が培ってきた製造の経験が生きる。一方で年々コストが上がってきている深セン周辺では、受託製造のビジネスはどんどん難しくなってきている。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1180文字 / 全文2012文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

オリジナル動画が見放題、ウェビナー参加し放題

日経ビジネス最新号、9年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「「世界の工場」の明日」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。