全1827文字

 中国経済はGDP(国内総生産)成長率で10%を超える急成長から、近年は6%台のゆっくりした成長に移行した。急激な成長は、諸外国から中国への製造委託が進んだことと、中国側のキャッチアップによるものだ。ゴールが決まっている大量生産は、大規模化による急成長を実現しやすい。また同じ製品、もしくは似たような製品を現地でつくることになるため、技術移転が急速に進む。

 だが、そうした急成長は必ず終わりが来る。2014年に中国政府が宣言したニューノーマル(新常態)は、高度成長が終わり、新たな成長ステージに入ったことを告げるものだ。キャッチアップと大規模化によって成長する時代は終わり、新たな時代では正解のない未来に向かってイノベーションを重ねていけるかが成長の鍵となる。

 中国のアリババ集団はそうした「正解のない時代の成長」を象徴する企業だ。9月10日に会長を引退した創業者のジャック・マー氏は、アリババを「自分の力で商売を始めるプラットフォーム」と位置付け、ネット通販や決済サービスの支付宝(アリペイ)などの事業を切り開いてきた。

 アリババは2016年から毎年「Taobao Maker Festival(淘宝造物節)」というイベントを本拠地の杭州などで開催している。この欄でたびたび触れている、全世界で行われているDIYの祭典、メイカーフェアとは違い、あくまで「新しい商売を始める」ことにフォーカスしたイベントだ。今年の同イベントは9月12日から25日までの2週間にわたって開催された。

会場は昨年に比べて小さくなったが、会期は2週間と長くなった2019年の「Taobao Maker Festival(淘宝造物節)」

 中国というとDJIや華為技術(ファーウェイ)に代表されるような、エレクトロニクス関連の製品や企業の印象が強い。淘宝造物節でも両社はブースを構え、大きな存在感を示していた。中国では理解を絶するようなクールなハイテクノロジーを意味する「黒科技」という言葉がある。淘宝造物節にも黒科技ブースがあった。しかし、黒科技ブースは全体の25%ほどで、多くのスペースは飲食や服飾、ホビーなど、より文化的な要素が強いビジネスに充てられていた。

ロボットアームが傘に筆で器用に絵や文字を書いていく様子を実演していた。DJIなど中国おなじみのハイテク企業もブースを出していたが、面積が広くなかった