中国は2015年以降、スタートアップの起業とベンチャー投資について大規模な規制緩和を行い、2016年のスタートアップバブルを経て、今も起業が盛んな状態を維持している。様々な調査でも「起業する意欲がある」と答える人の割合は高い。今回の新型コロナウイルスの感染拡大は実体経済を縮小させ、スタートアップへの投資にも影響を及ぼすとの見方もある。
中国の経済政策は長らく政府主導の計画経済で、国営の大企業を中心にしたものだった。外資の誘致を通じた先進国からの産業移転は、典型的な政府主導の政策だ。政策として外資を受け入れる特区を定め、税制や規制などで優遇、地元企業と合弁させることで技術移転を進めていく。中国が安くて豊富な労働力を売りにしていたときはその政策が有効に機能していた。研究開発の中でもロケットの開発などは政府主導の計画と有名大学出身のエリートが進めていくものだ。
だが、この形ではガレージで生まれるようなスタートアップは出てこない。
2014年に米国のオバマ前大統領がホワイトハウスでDIYの祭典であるメイカーフェアを行うなど、世界的にスタートアップやボトムアップからのイノベーションが目立ち始めた潮流に合わせて、中国は2015年から「大衆創業万衆創新」という一大キャンペーンを始め、今も続いている。
「大衆創業万衆創新」政策は、それまでエリート重視・計画重視だった中国の起業政策をボトムアップ重視・スタートアップ重視に変えるためのものだ。それまで起業へのハードルが高かった中国で、大きな規制緩和と資金誘導が行われた。
2010年代に入ってからの中国は、賃金の上昇圧力により、労働力の安さを売りにした産業発展が難しくなっていた。典型的な「中進国の罠(わな)」に直面する中、すでに国内で蓄積されていた資金を起業家育成とスタートアップに開放した「大衆創業万衆創新」政策は効果を発揮。ほんの1~2年で中国各地にVC(ベンチャーキャピタル)やプライベートエクイティが乱立し、様々な大学に創業センターが並び立つようになった。
この記事は会員登録で続きをご覧いただけます
残り1421文字 / 全文2288文字
-
【春割】日経電子版セット2カ月無料
今すぐ会員登録(無料・有料) -
会員の方はこちら
ログイン
【春割/2カ月無料】お申し込みで
人気コラム、特集記事…すべて読み放題
ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能
バックナンバー11年分が読み放題
この記事はシリーズ「「世界の工場」の明日」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。
Powered by リゾーム?