「高度化」と「低価格化」と言うと別方向の進化に思えるかもしれないが、そうではない。技術革新による低価格化は新技術のさらなる普及を後押しする。大衆化は技術の新たな使い方を生み出し、次のイノベーションにつながっていく。例えば中国では、ロボット技術がすさまじい勢いで低価格化し、普及しつつあることで、次のイノベーションへの苗床になっている。

 中国で様々な企業が販売しているロボット掃除機は年々高度化している。小米(シャオミ)が8月に発売した、ごみの吸引とモップがけの両方を自動でできる製品は1999元(約3万円)の安価なロボット掃除機だが、自己位置推定と地図生成を同時に行うSLAM技術が採用されていて、そのためにLiDARというセンサーが搭載されている。

LiDARを搭載したシャオミのロボット掃除機
LiDARを搭載したシャオミのロボット掃除機

 LiDARは距離を測定するレーザーを広範囲に照射して、面や3次元で周辺位置を推定する技術だ。自動運転などで使われている。ロボット掃除機はセンサーの塊で、床がカーペットか板張りかを検知するセンサーや段差から落ちないようにするセンサーなどが搭載されている。それらセンサーの情報を統合して計算するプロセッサーもスマホ並みで、ロボット掃除機の代名詞となった米iRobotのルンバシリーズの最新型「i7」は米クアルコムのSnapdragonシリーズを使っている。また、シャオミはRockchipやAllwinnerといった中国製チップを採用している。どちらもWi-Fiでの通信や画像処理の機能をワンチップに備えたSoC(System on a Chip)で、スマホに使われるような強力なものだ。

 製品紹介ページには、プロセッサーのコア数やGPUの性能、さらにはプロセッサーが何ナノのプロセスルールで作られているかといった、とても掃除機の宣伝とは思えない情報が並ぶ。

シャオミのロボット掃除機の製品紹介ページ
シャオミのロボット掃除機の製品紹介ページ
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 iRobotのルンバは他社に先駆けてSLAM技術を搭載しているものの、最新i7シリーズでもコストの問題でLiDARの搭載はしていないようだ。iRobotとシャオミの製品を比べたわけではないので正確な評価はできないし、そもそも自動運転技術は掃除機の最重要要素ではないが、価格ではi7の3割ほどのシャオミ製品がLiDARを搭載しているのは驚くべきことだ。

 ルンバではカメラを使ったSLAMが2015年発売の900シリーズで採用され、その後もアップデートしている。シャオミは18年発売の機種でカメラとLiDARを併用し、最新機種ではLiDARのみとしている。こうした試行錯誤による技術の取捨選択はイノベーションそのものだ。

部屋のマップが自動生成され、掃除機が掃除した軌跡がリアルタイムに更新されていく。バキュームとモップでは違う軌跡を描くように最適化されている
部屋のマップが自動生成され、掃除機が掃除した軌跡がリアルタイムに更新されていく。バキュームとモップでは違う軌跡を描くように最適化されている
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 シャオミのロボット掃除機はスマホアプリからコントロールする前提になっている。上記の画像を見ると、筆者の部屋が自動でマップ化され、充電スタンドや障害物の場所や掃除機が現在どこを掃除しているかがリアルタイムで分かる。スマホアプリに表示されるマップで「ここを重点的に掃除してくれ」「ここには立ち入らなくてよい」といった指示もできる。

掃除するエリア、掃除しないエリアの設定も可能。
掃除するエリア、掃除しないエリアの設定も可能。
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