
7月9日に公開した「半導体チップ製造もオープンに グーグルがプロジェクト開始」で、米グーグルが米国の半導体受託製造会社(ファウンドリー)、スカイウォーターと組んで「FOSSi(Free and Open Source Silicon)」というプロジェクトを手掛けていることを紹介した。半導体チップを誰もがアクセスできる技術で製造するプロジェクトである。そのFOSSiに関して、情報が次々公開され、全容が明らかになりつつある。大規模集積回路(LSI)製造のオープン化は、コンピューターの再発明に近いインパクトを持ち得る。
「技術の民主化」が波及しづらいLSI製造
2012年に『MAKERS 21世紀の産業革命が始まる』(クリス・アンダーソン著)が大ヒットし、2014年に米国のオバマ前大統領がホワイトハウスでDIYの祭典「メイカーフェア」を開くなど、電子工作を使ったDIYがブームになって久しい。3Dプリンターやレーザー加工機、開発用の安価で高性能なマイコンボードなど、高度な電子工作を支えるデジタルな工作機械も進化を続けている。
また、オープンソースのソフトウエアや安価に利用できるクラウドコンピューティングなど、かつては特定の組織に所属しないと難しかった技術へのアクセスが、広く開放されている。「技術の民主化」は複数の分野にまたがるムーブメントとして今も進んでいる。
しかし、「集積回路(LSI)をDIYする技術」は、「半導体チップ製造もオープンに グーグルがプロジェクト開始」でも紹介したMakeLSIなど、いくつかの試みがあったものの、大きな動きにはなっていなかった。その中でFOSSiはLSI製造を、プログラミングのように「誰でもできる、敷居の低いもの」にしようとしている。
技術の民主化は大きなムーブメントだが、あらゆる分野で進んでいるわけではない。例えば健康や医療に関わる分野は公的資格や認証制度などで管理されている。LSIの製造は許認可事業ではないが、大規模で高度なため、参入が限られている。
「集積回路」のもとである、電子回路をDIYすることは民主化されている技術といえる。部品も秋葉原などで購入できる。しかし、その回路を集積して半導体上に焼き付ける集積回路(LSI)の設計や製造は、今もアクセスが難しい。
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