全3102文字

 筆者らが執筆した『プロトタイプシティ』(KADOKAWA)は中国・深圳を中心とした都市の発展形態について考察している。計画先行ではなく、先に実践があり、それによって変化した環境を後追いする形で発展していく都市をプロトタイプシティと呼んでいる。執筆者らが語るオンラインイベントで、評論家・翻訳家の山形浩生氏はプロトタイプシティが成立する条件について語ってくれた。

山形浩生氏が登壇したオンラインイベント「プロトタイプシティ成立の条件」

成功した人工都市は世界でも珍しい

 何もないところに、計画的に新しい都市をつくる。それは、都市計画を勉強したことがある、もしくは仕事としている人にとってはとても魅力的なことだろう。実際、世界各地で人工都市をつくる試みがある。しかし、そうした人工都市はほとんどが失敗している。もともとあった都市がモダンに脱皮する例は多くあるが、何もないところに人を集めても、うまくいかないことがほとんどだ。シリコンバレーは人工的な都市の成功例であり、研究事例も多い。深圳の成功がシリコンバレーになぞらえられる理由の1つでもある。

 都市の発展は、どのようにもたらされるのか。2つの大きな考え方がある。

 1つは「同じようなものを集積させることで、互いに交流やコピーが行われ、全体が盛り上がる」という考え方。もう1つは「同質なものを組み合わせても、より大きい集積がある都市との競争の繰り返しになる。異質なものを組み合わせることが生き生きとした盛り上がりに通じる」という考え方だ。

 これは二者択一というより程度問題になる。リチャード・フロリダ氏が提唱した「クリエイティブ・クラス」のように多様性を重視する考え方や、何かしらのコア産業が一度できてしまえば、その後は転がりだすという意見など、どこを切り取るかによって見え方は異なる。ただ、結果としてうまくいっている都市には様々な産業や交流が自然発生的に生まれている。人工都市がなかなか成功しないのは、自然発生的な交流を生み出しにくいことが原因だ。