(写真:PIXTA)
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 筆者らが執筆した書籍『プロトタイプシティ』(KADOKAWA)では、イノベーションを生み出す仕組みが変わったことを説明している。大きな計画と根回しが先行する従来のやり方のほかに、実際に動作するプロトタイプを作り、少数でもその価値を共有できるコミュニティーと共に進んでいくことでイノベーションを社会実装する方法を詳述している。

 書籍の出版に際して、執筆者らが本書の内容を紹介するイベントを行った。GOROman氏は「レガシー社会との戦い」と題した講演で、自らプロトタイプを作り、広めることで新しい世界を広げていく「俺オーシャン」とも呼ぶべきアプローチを提示した。GOROman氏の講演から筆者が感じたことを紹介する。

GOROman氏はエクシヴィ代表取締役社長。AniCast RM取締役。XRコンソーシアム理事。2014年Oculus Japan Teamを立ち上げ、親会社のFacebookで国内のVRの普及に努める。個人ではGOROmanとしてVRの開発、普及活動を行う。2018年VRアニメ制作ツールAniCastを発表

VR技術を日本にもたらしたコミュニティー

 今はデジタルトランスフォーメーション(DX)の中核技術の1つとして話題になるVR(仮想現実)。米オキュラスVR(現米フェイスブック)の最初の開発キットがクラウドファンディングサイトのKickstarterに登場したのは2013年のことだ。

 まだ注目する人が少ないときに、GOROman氏らがコミュニティーを広げたことで、Oculus RiftはVR技術を普及させるブレイクスルーとなった。初期の不安定な開発キットを動かす方法の共有や体験ミーティングを開催。オキュラスVR創業者のパルマー・ラッキー氏に会うために、米国でのイベントなどを何度も訪れて関係を築き、ついにはオキュラス・ジャパンを立ち上げた(オキュラスがフェイスブックに買収されたことで、GOROman氏もフェイスブック社員になる)。その波瀾万丈のストーリーは、GOROman氏の著書『ミライをつくろう! VRで紡ぐバーチャル創世記』(翔泳社)に記されている。

GOROman氏らの活動はOculusが日本で普及するきっかけとなった。
GOROman氏らの活動はOculusが日本で普及するきっかけとなった。

新しいものに触れるとレガシーだったことが分かる

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