
筆者らが執筆した書籍『プロトタイプシティ』(KADOKAWA)では、イノベーションを生み出す仕組みが変わったことを説明している。大きな計画と根回しが先行する従来のやり方のほかに、実際に動作するプロトタイプを作り、少数でもその価値を共有できるコミュニティーと共に進んでいくことでイノベーションを社会実装する方法を詳述している。
書籍の出版に際して、執筆者らが本書の内容を紹介するイベントを行った。GOROman氏は「レガシー社会との戦い」と題した講演で、自らプロトタイプを作り、広めることで新しい世界を広げていく「俺オーシャン」とも呼ぶべきアプローチを提示した。GOROman氏の講演から筆者が感じたことを紹介する。
VR技術を日本にもたらしたコミュニティー
今はデジタルトランスフォーメーション(DX)の中核技術の1つとして話題になるVR(仮想現実)。米オキュラスVR(現米フェイスブック)の最初の開発キットがクラウドファンディングサイトのKickstarterに登場したのは2013年のことだ。
まだ注目する人が少ないときに、GOROman氏らがコミュニティーを広げたことで、Oculus RiftはVR技術を普及させるブレイクスルーとなった。初期の不安定な開発キットを動かす方法の共有や体験ミーティングを開催。オキュラスVR創業者のパルマー・ラッキー氏に会うために、米国でのイベントなどを何度も訪れて関係を築き、ついにはオキュラス・ジャパンを立ち上げた(オキュラスがフェイスブックに買収されたことで、GOROman氏もフェイスブック社員になる)。その波瀾万丈のストーリーは、GOROman氏の著書『ミライをつくろう! VRで紡ぐバーチャル創世記』(翔泳社)に記されている。

新しいものに触れるとレガシーだったことが分かる
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