7月末に刊行した書籍『プロトタイプシティ』では、筆者を含む各分野の専門家が深圳のイノベーションについて解説している。発刊に合わせて、著者によるネットイベントも開催している。その中で、著者の1人でシステム開発に詳しいインターネットプラス研究所の澤田翔所長は、サービス立ち上げ段階のシステム開発において、中国とそれ以外(日本や欧米など)では重視する点が異なると述べている。

ソフトウエアエンジニアとしての経験から、中国のシステム開発について説明した澤田氏の講演。資料と概要はこちらで公開されている

 今やエンジニア大国になった中国では、日本や欧米と同様にオンラインのエンジニアコミュニティーが活発に活動している。ところが人気の技術カテゴリーには違いがある。

 新しいインターネットサービスを公開するとき、その品質は重要だ。ソフトウエアの品質を定量的に表すのは難しいが、下記のようなソフトウエアは品質が低いとされる。

  • 通常の利用でクラッシュやエラー画面にたびたび遭遇する
  • 操作に対する反応が悪い(待ち時間が長い、思い通りに動かない)
  • 動作が鈍くなったときに、おかしな動作をする
  • 改修しづらく、サーバーを増やすなどの大規模化時に、作り直さなければならない
  • 最新の技術やトレンドを取り入れることが困難

 こうした品質の低いシステムを生まないためには、きちんとした設計が必要だ。その設計にはプログラムの書式をそろえる、レビューのやり方を決めるといった管理上の工夫から、使用するサーバーやミドルウエアなどの開発環境、テストの方法や自動化テストツールの決定など多岐にわたる。

 「機能の拡張性が高く、負荷に強く、メンテナンスがしやすいプログラム」を作るための設計は、プログラムそのものと並んでエンジニアの腕の見せどころだ。大規模なシステムを作るときほど設計の重要性が増すため、欧米でも日本でも「品質の高いプログラムを作るための設計やテスト」については関心が高い。エンジニアの関心が高く、実際に役立つ分野なので、自動化テストツールやシステム公開前に関連ファイルの更新を自動でチェックするツールなど、「開発しやすいシステムを作るための仕組み」も日々進化を続けている。

 ところが、エンジニア大国となり、多くのシステムがリリースされている中国では、新しい技術への関心は日本と同様に旺盛だが、品質向上のための仕組みについてはあまり関心がなく、エンジニア向けのコミュニティーでも盛り上がりに欠ける。

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