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(写真:PIXTA)

 あらゆるプロジェクトには終わりがある。オープンソースのプロジェクトも例外ではない。誰でも開発に参加できるオープンソース・プロジェクトが「終わる」とは、開発するメンバーがいなくなることだ。「ひどいときにはそのプロジェクトがいかに無意味かをインターネットフォーラムで詳細に分析されたりするわけだ」(バニー・ファン)

とあるオープンソース・プロジェクトの終了

 バニー・ファンは筆者が山形浩生氏とともに翻訳した『ハードウェアハッカー』(技術評論社)の著者である。その中で、バニー・ファンが手がけた「Fernvale」プロジェクトを例に挙げ、典型的なオープンソース・プロジェクトの終わりについて語っている。

 Fernvaleは、オープンソース・ハードウエアとして携帯電話の開発ボードを作るプロジェクトだった。中国・深圳で、バニー・ファンは完全に動作するGSM(2Gの携帯電話網。現在の日本では停波されている)の携帯電話を入手した。

バニー・ファンが入手した携帯電話。価格は12ドルほど。(写真提供:バニー・ファンCC BY-SA 4.0

 価格は12ドルほど。携帯電話なので液晶ディスプレー、バッテリー、筐体(きょうたい)などすべてを含めてこの価格だ。キャンペーンによるゼロ円携帯ではなく、12ドルで小売りして利益が出ていたのだから恐ろしい。

 彼はこの携帯電話をリバースエンジニアリングし、開発環境やハードウエアの情報などをすべてオープンソースのものに置き換え、ないものは自分たちで作るというプロジェクト、Fernvaleを2012年ごろから始めた。

 このプロジェクトに協力するエンジニアは多く、期待は大きかったが、スタートから1年あまりでフェードアウトすることになる。2014年、携帯電話のメインチップを作っている台湾のMediaTekと開発ボードを作っている深圳のSeeedが協力して、開発キット「LinkIT ONE」を発表したためだ。

 LinkIT ONEはFernvaleと完全に同じではないが、同様の目的で使えて、その時点で開発者が必要な機能をおおむね備えていた。バニー・ファンが「LinkIT ONEが出た後も、このオープンソース・プロジェクトを進めるべきだろうか?」とコミュニティーに問いかけたところ、関心は依然として高いものの、実際に手を動かして開発する人は大きく減り、結果としてプロジェクトは実質的に終了することになった(詳細は『ハードウェアハッカー』の9章「ハードウェア・ハッキング」に記されている)。

2015年にシンガポールで開かれたオープンソース関連のカンファレンス「FOSS ASIA 2015」で、Fernvaleについて発表するバニー(左)と共同開発者のXobs