筆者は2020年から金沢大学の秋田純一教授ら数人のメンバーと「分解のススメ」というイベントを開催している。スマートフォンや玩具など様々なハードウエアを分解して分かったことをプレゼンテーションする、分解だけにフォーカスしたTEDのようなイベントだ(過去のイベントのアーカイブ)。

 ハードウエアを分解することで分かるのは技術だけではない。部品の構成からは産業全体のエコシステムが見えてくる。また、部品の配置や設計からは作られた場所の文化のようなものまでも考察することができる。共通の関心領域を持ちながら視点の違う者同士が意見を交換することで得られるものは大きい。

 7月18日に開催した第11回「分解のススメ」は、ニセモノチップ解析編として、最近の半導体不足で息を吹き返しつつあるニセモノチップを解析する発表が集まり、ニセモノチップに起きている進化や変化を数多く見ることができた。

不良品を廃棄したと見せかけるためのニセモノもある

 ハードウエア製造では品質チェックではねられる不良品が出るが、不良品とOK品の差がわずかなことも多い。中国・深圳のハードウエア製造を詳述したマサチューセッツ工科大学(MIT)のバニー・ファン著『ハードウェアハッカー』には、そうした不良品を工場から横流しするための様々な手口が紹介されている。例えば、発注者から不良品をきちんとスクラップにすることを義務付けられているので、スクラップにしたと見せかけるための、見た目だけ本物に似せたニセモノが市場に流通しているという。

『ハードウェアハッカー』を翻訳した筆者は今回の「分解のススメ」で「ハードウェアハッカーに見るニセモノ解析」を発表した

 秋田教授らの発表では、様々な偽造チップが紹介された。互換チップのラベル(マーキング)を置き換えたもの、古いチップを偽造したもの、中にはニセモノであることは間違いないが、どういう商売につながっているのか理解できないようなものさえあった。

 本物が数百円ほどで買えるマイコンチップの分野でこうした多様なニセモノが作られていることは、この産業が成熟して、様々なプレーヤーがいることを示しているともいえる。

半導体のマネーゲームは拡大し続けている

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