今もパソコンの製造を請け負う中国EV大手のBYD
筆者が拠点としている深センには、さまざまな立場でハードウエアに関係している会社が多い。深センのハードウエア製造システムはインターネットサービス企業のようにモジュール化していて、設計の専門会社、製造の専門会社、検査の専門会社などの企業群が「ハードウエア製造」という全体のサービスを構成している。
その現象はアマゾンや米グーグルなどの会社が「システムを作るためのサービス」を提供している形によく似ている。
世界的にハードウエアの需要が高まり、深センには特にアジア・アフリカ向け製品の製造で大忙しの企業も多い。一方で他社よりクオリティーが高いとか、品質はともかく安いといった何らかの特徴がない企業は廃業に追い込まれることもめずらしくない。
このような厳しい競争環境の中で、価格を自分で決定できる自社製品に活路を見いだすハードウェア企業は少なくない。ただ、自社製品を開発するにも「第一桶金」が必要になる。
教育用ロボットを開発しているCityEasy Technologyや日本で大人気の超小型コンピューター、GPDシリーズを開発しているGPD社など、自社ブランドを持つ多くの深センのベンチャー企業が、製造受託で第一桶金を得て自社製品の開発に乗り出している。
製造受託の次のステップとしては、事前受注が見込めるクラウドファンディングを使うことが多い。クラウドファンディングが大成功し、継続的に自社製品を買ってくれる顧客を確保することができるようになってから受諾開発の仕事を減らしていくことがほとんどだ。

電気自動車で中国最大手の比亜迪(BYD)は、もともとフォックスコンのような総合的な製造受託で大きくなった。現在もASUSのコンピューターなどの製造受託を続けている。
日本発のグローバル企業であるパナソニックの礎を築いたのは、松下幸之助氏が1つのソケットで2つの電球を光らせることができる二股ソケットをいち早く商品化して売りさばいたことだった。二股ソケットがパナソニックにとってのMVPで、「第一桶金」となったのだ。まさに深センの起業家のようなリーン・スタートアップだ。そうした事象を考えると、成功するベンチャー起業家の振る舞いは洋の東西を問わず変わらないのかもしれない。
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