ワクチンは効果大だが、決定打になるには時間がかかる
今回のデルタ株に対してもワクチンは有効で、濃厚接触しても感染しづらい・感染しても重症化しづらいなどの効果が出ているようだ。しかし、ワクチンを打った人の感染確率が下がっても、地域全体での接種率が上がらなければ結局、感染が広がってしまう。前述の鍾南山氏のリポートによると、ワクチンの保護効果を69%と見ており、地域に住む人の80%が2回の接種を完了して2週間が経過しないと集団免疫としての効果が期待できないという。
中国の新型コロナ対策は、入国時の強制隔離やほぼ強制といえる徹底した検査など、全体主義国家らしいコワモテの対応にとどまらない。
PCR検査履歴やワクチン接種状態を示す健康カードが省ごとに導入され、警戒レベルが上がるとビルや地下鉄の入り口で提示しないと入れないことは知られている。その健康コードもアップデートを繰り返している。
筆者はすでに2回のワクチンを接種し、5月末には免疫を獲得しているはずだ。そんな中、6月半ばに健康コードのアプリがアップデートされ、まるでゲームのトロフィーのようなマークが表示された。「2回めのワクチンが完了しました!あなたの免疫獲得と、免疫を増やして社会を救う行為に感謝します」というメッセージとともに、広東省名物の獅子舞のイラストが現れた。

1回目のワクチンでも別の獅子舞のイラストが表示されるようだ。獅子舞はオフィスや店舗のオープニングなどでは縁起物として重宝される。また舞獅(wushi)の中国語発音は「無事」と同じなので、その意味もかけているようだ。

中国でもワクチン接種は急速に進んでいる。それでも変異株の発生や外国からの人の来訪などで、今後も隔離や大規模な検査などは続けざる得ない。変異株は今回のデルタ株以降も発生する見込みが大きく、隔離施設などを増設するのはそれを見越してのことだろう。
もちろん、ワクチンの接種率を上げるのは大前提だ。しかし、それだけで十分と言えるかは予断を許さない。五輪・パラリンピックで各国からの選手団や報道陣の受け入れが始まっている日本にとって、中国の変異株対応には見習うべき点も多いのではないだろうか。
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