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 作者が著作権を保持したまま作品をシェアするクリエイティブ・コモンズなどデジタル時代の法制度を研究している米ハーバード大学のローレンス・レッシグ教授は、人の行動を制御する方法を以下の4つに分類している。

  • 1.法
  • 2.倫理
  • 3.アーキテクチャー
  • 4.損得

 このうち中国では、3.アーキテクチャーと4.損得の組み合わせにより、人々の行動が急速に変化している。

 例えば、動画でも触れている滴滴出行(DiDi)。米国のウーバーテクノロジーズやリフトのようなライドシェアのサービスだ。スマホアプリで目的地を指定してタクシーを呼び、支払いもアプリと連動した電子決済で済ませることができる。外国人にとっては英語でアプリが操作でき、ビザなどの国際クレジットカードで支払いができるのでとても重宝している。

 中国のタクシーはかなり劣悪だ。行き先は住所を書いた漢字を見せれば伝えられるが、遠回りされることが多いし、釣り銭をきちんと支払ってくれないこともある。乗客とタクシーのトラブルもめずらしくなく、運転席の周囲が運転手を強盗から守るためのアクリル板や格子で覆われていることが多い。

 DiDiは明瞭な運賃、GPSと地図による道案内、トラブル時にはクレーム可能といった機能が受けて、破竹の勢いで規模を拡大してきた。中国のタクシーは日本と同様に規制産業で、各地のタクシー組合や政府系企業が「きちんとした資格を持ったタクシー運転手以外が人を乗せて運転するのは危険だ」とロビー活動をしている。しかし、DiDi側もドライバーの資格を厳格化するなどして、拡大は続いている。つまり、4.損得 と 3.アーキテクチャーに追随する形で1.法(ここでは企業側の自主的な制度だが)も進化している。

 そして深センのような人もモノもどんどん入れ替わる急成長中の都市では、DiDiの登場に合わせて一般のタクシードライバーのクオリティーも高まっている。つまり2.倫理も進化しているわけだ。それが2~3年ぐらいのタイムスパンで起こるのが深センのダイナミズムと言えるだろう。

 動画に登場するジェネシスホールディングスの藤岡淳一社長の「低品質でも、品質含めてほかよりコストパフォーマンスがよければ仕事が殺到する。高品質でも安物でも、どこかの視点から見てメリットがあればその企業は成長している」という言葉は、また異なる観点からの深センのダイナミズムを表している。