日本からは失われつつあるサプライチェーンの柔軟性

 日本の製造業は高品質な部品製造が可能なことで知られているが、藤岡氏と岩佐氏がともに語っている通り、日本企業のオーバークオリティーな発注は、中国では歓迎されていない。藤岡氏も日ごろから「日本の製造業とは協業できない」と語っている。多大な努力を払って品質向上をしてきた日本の製造業は、協業する会社にも同様のクオリティーを求める。

 BtoB向けの受託製造を中心に業務を行っているジェネシスの藤岡氏は、サポートを含めてより信頼性の高い製造サービスを行うために、製造施設を深センに構え、サポートスタッフを日本に置いている。一方、岩佐氏はまた別のアプローチを取っている。

 岩佐氏が語っているのは、中国のサプライチェーンの柔軟さだ。外装作りや基板設計のほか、検品や部品のチェックでさえ、個別に外注することができる。設計に当たる部分を自分たちで行って、製造部分から中国の工場と協業することも不可能ではない。

 岩佐氏と藤岡氏が語っているように、個別の部品単位で見た中国の品質は、さほど上がっていない。ただ、製品全体のデジタル化が進んだことや、製品の価値が手元のハードウエアそのものから接続するネットワーク全体で担保されるものに変わりつつあることで、中国品質の部品で作ったハードウエアでも、魅力的な製品を小ロットで作ることができるようになっていることも事実だ。

 それはそれなりの部品でも製品として成立させる技術の進化であって、悪かった品質が上がったわけではない。しかし、製品のデジタル化などテクノロジー全体の進化によってものづくりの状況が変わってきているといえる。

 岩佐氏は珠江デルタエリアの製造サプライチェーンとの協業に初期から携わり、エッジの立った製品を小ロットで作る取り組みを続けてきた。動画で具体的に触れている不良率や見積金額を含め、目的を達成するためのさまざまなアプローチや発注側から見た柔軟性は、むしろ近年の日本から失われつつあるものなのかもしれない。

この記事はシリーズ「「世界の工場」の明日」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。