新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターの予約システムを巡る問題が大きく取り沙汰されている。予約システムがどうにも残念なものだったことに多くの批判が集まっている。ワクチン接種を加速する上でしっかりとしたシステムが必要なことは間違いない。その一方で、悪意をぶつけ合ったり、責任を誰かに押し付けようとしたりしているのではうまくいかない。

 「ボスに遠慮するとソフトウエアが作れない」

 マサチューセッツ工科大学(MIT)のハードウエア研究者で、中国でのハードウエア製造のオーソリティーでもあるバニー・ファンは、このような発言をしている。

 ハードウエアの不具合は「この回路に電流が流れていない」「ここのネジが外れている」とったもので、改善策に議論の余地がないケースが多い。一方でソフトウエアの不具合は単なるバグによるものよりも、仕様やデザイン、フレームワークの選定など広範囲にわたる要因の中から、議論の結果として「ここを直すべきだ」という結論に至ることがほとんどだ。

 中国ではボスの権限が強すぎる傾向があるため、正しいか間違っているかよりも「ボスの言葉」に動かされてオープンな議論をしづらい文化があり、ハードウエア開発では表面化しない問題がソフトウエアでは起きるのかもしれない。

 同様の言葉は中国のハードウエア企業のトップからも出ている。ドローン最大手DJIの人材採用サイトには、創業者のフランク・ワンの言葉として、寓話(ぐうわ)「はだかの王様」を引き合いに出して、「真実を大声で言う勇気が必要だ。DJIはあえて真実を語る子供でありたい」という一文が掲載されている。DJIは世界中で採用活動を行っているが、この言葉は日本語や英語の採用サイトには載っていない。

「真実を大声で言う勇気が必要」とDJI創業者フランク・ワンは訴える

 バニー・ファンやフランク・ワンの言葉は中国の社会や文化を念頭に置いたものだが、これらの言葉から筆者が想起したのは何よりも日本のことだった。

 今もネット上ではシステムの体をなしていない大規模接種センターの予約システムについて様々なコメントが飛び交っている。存在しない日付で予約できる、他人が番号を勝手に上書きできるなど、システムがそもそもまずいことに弁護の余地はない。すでにあるIDと突き合わせができないなど、指摘は簡単だが実際に解決するのは難しい問題も多くあるだろう。様々な意見をまとめずに進めた結果、役割や用途がどうもはっきりしないマイナンバーとの連携が今回もできなかった。

 これはまさに、広範囲にわたる要因の中から議論の結果として対応しなければならない問題で、そのためには闇雲な否定や肯定でなく、オープンな議論をして改善に向かわねばならない。

続きを読む 2/2 システムについて愛のあるオープンな議論が必要だ

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