深圳各地に予約不要で無料のワクチンスタンド
ワクチンの接種率向上のために深圳市政府が行っているのは出前だけではない。深圳各所の広場には巨大なプレハブのワクチンスタンドができている。こちらは予約不要かつ無料でワクチンを接種でき、4月8日に南山区のスタンドの稼働開始を確認した際には長蛇の列ができていた。

その後も深圳市内の各地で無料ワクチンスタンドを見ているが初日ほどではないにせよ、それなりににぎわっている。ワクチン接種後は30分ほど経過を観察する必要があるため、流れ作業で接種していく際は接種後の待機場所がボトルネックになる。ワクチンをどれだけ早く供給しても人口1200万人を超える深圳の人々全てにワクチンを行き渡らせるには、数週間以上の時間がかかるだろう。
4月半ばから外国人も接種の対象に。バタバタしながら進む中国らしい対応
北京や上海などでは3月から外国人も接種対象になっている。筆者のいる広東省は外国人への対応が遅れていたが、4月9日に広東省政府から「外国人も12日より接種対象」とのアナウンスがあり、接種場所が告知された。
接種には事前予約が必要だ。ところが、4月12日当日はシステムが動いていなかった。1日に何度もスマホで予約システムを確認したが、そもそもログインができない。その後、ログインはできたものの接種場所が1つも表示されない。接種場所が表示されるようになると、今度は予約が常に満席となっていて受け付けできない。こんな具合に「少しずつは進化しているようだが、結局は使えない」という状態が数日続いた。
どうやらアナウンス先行で、接種場所の準備が整うまでに数日かかったようだ。3日後の14日に深圳などいくつかの市の数カ所に限って予約がスタートし、翌日15日に予約して接種することができた。そのときの様子が先ほどのピースサインの写真だ。
筆者が接種しに行った坪山区の病院では、接種に来ていたのは、外国籍といっても台湾や香港に籍がある「中国語は流ちょうに話せるが中国のIDカードはない」人が大半で、1つしかない英語対応窓口では、学校での英語はうまいのだろうが実際に外国人と話した経験は乏しそうなスタッフと、住所や所属企業を中国語で書くことができない欧米人の接種対象者が、他の列では5分で終わる処理に1時間以上かけていた。
漢字の読み書きと初歩的な中国語(所属企業を言える、日本のパスポートのどこがIDに当たるかを伝える、簡単な問診に答える、「接種後30分は待機所から出ない」といったことが理解できるといった程度)ができる筆者を含む外国人はパンクした外国人窓口でなくて中国人窓口に回され、システムに登録して接種することになった。
バタバタと動き出したこのシステム自体がすでに過去のものとなっており、4月21日には広東省全体で統一システムでの受け付けとなったようだ。4月15日に接種した筆者は、2回目の接種が5月に入ってからになるので、1回目と2回目では別の方法で登録することになる。
とはいえ、予約や本人確認でトラブルが起こることは、防疫全体から見たらささいな問題にすぎない。仮に何回か長蛇の列に並ばされたとしても、パンデミックが起こることに比べたら大したことではない。実際に今日もワクチン接種をした人が大勢いて、その分、街は安全になり、香港やマカオといった近隣との往来開始は近づいている。アナウンスや実施がバタバタと変更されながらも大量のリソースを投下することでとにかく物事を前進させている様子は、中国らしさ、深圳らしさがよく表れていると感じた。
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