東京都や大阪府などで3度目の緊急事態宣言が発令されるなど、日本では新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。一方、「まるで工場の工程管理、中国の徹底した新型コロナ対策」などでもお伝えしてきたように、総力戦で新型コロナウイルスの封じ込めに成功している中国では、試食を伴う大規模なフードフェスティバルが行われるなど経済活動が完全に戻っている。加えて、各地方政府でのワクチン接種も急ピッチで進められている。

 深圳市の新規の陽性患者数は1日数人程度でゼロの日も多い。そのためワクチン接種会場の受付スタッフや接種スタッフも、防護服は着ているもののどこかのんびりとした雰囲気だ。深圳でワクチン接種をする際にスマホで記念撮影を試みたところ、スタッフはにこやかにピースサインしてくれた。

筆者がワクチン接種をする際にスマホを取り出すと、スタッフはピースサインをしてくれた
筆者がワクチン接種をする際にスマホを取り出すと、スタッフはピースサインをしてくれた

 深圳でのワクチン接種は物量作戦でもある。4月12日、筆者がデスクを借りている深圳市福田区のコワーキングスペースには、ワクチンの「出前」が登場した。事前予約が必要という呼びかけがあったが、実際は当日訪れた人は誰でも受けられた。ワクチンは「ナマモノ」なので、事前に人数をざっくりと把握するための予約受け付けだったようだ。

 職場にワクチンを持った医療関係者と順番の整理などを行うボランティアがそれぞれ3~4人ずつ訪れ、会議室を受付会場にしてコワーキングスペースの利用者にワクチンを接種していた。ビルの他のフロアからも希望者が集まり、接種されたのはおそらく100人ほどだろうか。午前中から始まった接種は3時間ほどで一段落し、スタッフは別のビルに向かっていった。

ワクチンの「出前」部隊
ワクチンの「出前」部隊

 中国では国民ごとに固有のIDを持つ「二代身分証」という近距離無線通信規格「NFC」機能付きのIDカードを携帯している。飛行機や新幹線に乗るときやイベント参加時など、様々な場面でIDカードの確認が行われる。ワクチン接種もこのIDで管理されているため、本人確認などの手間を最小化できることが、スピーディーな接種につながっているのだろう。

 筆者のような外国人はパスポート以外に身分を証明する方法がなく、「出前ワクチン」の接種対象にならないため、高みの見物を決め込んでいた。わざわざ医療関係者が来るということで、警察や軍隊などを動員して、強制的に全員に打っていくのではと興味深く見ていたが、そうした物々しい感じでなく、希望者を名簿に登録して接種していた。

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