新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くの機関が様々な研究を進めている。4月12日には、山口大学が密な状況を可視化する装置のプロトタイプを発表した。また4月14日にはNTTサービスエボリューション研究所の研究チームが、使い捨てマスクに取り付けたセンサーで呼吸の強弱を検出し、息を吐きながら顔を動かすなどの動作でスマートフォンなどのモバイル機器にジェスチャーで入力を行うシステム「IBUKI」を発表した(動画)。

 相次いで発表されたこの2つのプロジェクトは、どちらも深圳のスタートアップが開発したマイコンボード、M5Stackシリーズを利用して開発された。いずれのプロジェクトも、検知した情報を他のシステムに受け渡すことに価値がある、IoTのプロジェクトだ。そのためインターネット通信を行う部分をプロトタイプに追加する必要があるが、その部分の開発は研究の本質でなく、論文の製本やコピー作成に近い、いわば雑用的な業務だ。

 たいていのIoTプロジェクトではそうした汎用的な機能を備えた「開発ボード」と呼ばれる基板一枚の簡易的なコンピューター製品を土台としてうまく使って開発していく。昔から使われているものとしてはArduinoやRaspberryPiなどがあり、近年では画像認識などのAI開発に特化した米エヌビディアのJetsonシリーズなど、開発の主な目的にあわせて様々な種類の開発ボードが販売されている。

 シンガポール国立大学でコンピューターサイエンスを学び、数社のマイコン企業で働いたシンガポール人の張瑞安氏が上海で起業したESPRESSIFは、Wi-fiやBluetoothなどの機能を備えた安価なマイコン、ESPシリーズを発表し、大きくシェアを伸ばしている。ESPシリーズのマイコンは、代表的な開発ボードの1つArduinoと同じ開発環境をサポートしながらARMベースのCPUコアに加えて、Arduinoにはない無線通信機能を備えており、プロトタイプにも量産にも使いやすい。ESPRESSIFは2019年に上海科創板に上場し、同社のパートナーには国籍を問わず多くの企業が並ぶ。

 M5StackシリーズはそのESPシリーズのマイコンを採用した開発ボードだ。「楽しんで手を動かす人が増え始めた中国、新しいものが生まれる予兆」などでも何度か紹介したM5Stackは、2017年に最初の製品を発売して以降、2020年度は新型コロナ禍にもかかわらず前年度比で2倍を超える成長をするなど、急激にシェアを拡大している。

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