省ごとにデータベースが異なる健康コード

 行程カードは省や市をまたがった移動を管理するという性質上、全国的な管理となっているが、個人のPCR検査履歴を証明する健康コードは省ごとに管理する形になっているようだ。筆者は3月に上海市と江蘇省蘇州市を訪れたが、省と同等の特別市である上海市と江蘇省では、それぞれ別の健康コードアプリに接続し、コードを表示する必要があった。

上が江蘇省、下が上海市の健康コード。江蘇省のコードはリアルタイムでなく、1日の有効期限があるため、スクリーンショットでも対応可能と思われる。上海市のコードは名前がマスクされている
上が江蘇省、下が上海市の健康コード。江蘇省のコードはリアルタイムでなく、1日の有効期限があるため、スクリーンショットでも対応可能と思われる。上海市のコードは名前がマスクされている

 上海市と江蘇省では同じ健康コードでも仕組みが異なる。江蘇省のコードは1日ごとに更新される形で、その間はスクリーンショットでも機能するようになっている。スマホがネットに接続していないときや密集地帯、回線不良などにも対応できるが、不正の可能性も高まる。

 一方、上海の健康コードは名前の表示欄がマスクされるなど、個人情報に配慮されているようだ。色の名前の表示や一部の英語表示などユニバーサルデザイン(視覚障害者等、ハンディキャップのある人も使えるようなデザイン)にも対応しているようだ。

 健康コードは省ごとにアプリが異なるだけでなく、データが格納されているシステムもそれぞれ違う。筆者が確認したところ、広東省のシステムは騰訊控股(テンセント)系のクラウドに格納されているもようだ。一方、江蘇省のシステムはアリババ集団が提供するグループウエアDingtalkの機能を使っている。

 健康コードに限らず、中国では省ごとに様々な新型コロナ対策が実施され、そのルールがしばしばアップデートされることから、多少の混乱も生じている。例えば、国全体で外国人の流入を制限しているため、空港やホテルなどでの外国人対応は平時に比べると混乱しがちだ。空港では国際便が大幅に減っている影響で、とっさに英語が出なくなっているスタッフも散見される。

 筆者が蘇州市のホテルにチェックインをしようとした際には、フロントの係員がチェックイン可・不可の判断ができず、「パスポートに上海や蘇州のスタンプがないのはなぜだ」(当たり前の話だが、国内移動ではパスポートにスタンプは押されない)など要領を得ないやりとりがあった末、手続きについて公安当局と確認した後にチェックインとなった。

蘇州で宿泊したホテルのフロント担当者はチェックイン可・不可の判断ができず、公安警察に確認することになった。
蘇州で宿泊したホテルのフロント担当者はチェックイン可・不可の判断ができず、公安警察に確認することになった。

 もともと中国では、外国人が宿泊できるホテルについては公安当局と連動してパスポート番号などの情報を共有するシステムが導入されている。今回のコロナ禍で健康関連の情報も報告する必要が生じてきている。現在中国に滞在している外国人は現地で働いている人間だけとなっているため、外国人の宿泊が可能なホテルも大幅に数が減っている。加えて、健康コード関連の対策も必要になっているため、ホテルの従業員も把握に苦労しているようだ。

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