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中国とアリババらしい漢方薬とデジタル化

 ハンドブックに中医学(漢方薬やはり・きゅうなどを使う中国伝統医学)での対応についても記載があるところは、中国らしさが出ていて面白い。一方、現代の中国らしさが出ているのは、デジタルでの診療対応だ。

 感染症対策病院には、確実に感染者がいて、感染の疑いがかかっている人も多くいるので、健常な人はなるべく行くべきではないし、仮に行った場合でも滞在時間を最小限にすべきだ。

 このハンドブックでは、デジタルの予約システムで先に以下を実施することが推奨されている。

1.問診と簡単なアンケート
2.それによる振り分け
3.診療の予約

 アリババはこれらの機能を満たすシステムをすでに構築済みで、ハンドブックには参考事例としてアリババのシステムとその使い方が記載されている。

 COVID-19ほどの世界的な大問題になると、結果的にほとんどの産業に影響が出て、新しい事業の進め方を考えなければならない。その際、デジタル化は有効な手段になるはずだ。

ハンドブックには、デジタル化により病院での接触や来院人数を減らすための方策も記してある

アリババとジャック・マー財団の取り組み

 アリババ集団はCOVID-19の拡大を受けて、様々な対策を行ってきた。1月後半のマスク価格の高騰に対しては、中国政府に先駆けて悪質な業者をECサイトから追放した。北京市政府が複数の業者を連携させて対応に乗り出したのは2月20日、日本政府が対策を発表したのは3月10日のことだ。

 今回のハンドブックは、3月18日にアリババ財団が公開した感染症対策のためのオンラインプラットフォーム「Global MediXchange for Combating COVID-19」が提供している。このプラットフォームは中国の病院や在外華人などを含む様々な医療関係者が中国語と英語で情報共有するためのSNSだ。登録には医療機関の名前が必要になる。オンラインでCOVID-19に関する防疫や対応などの質問に答える一般向けのQ&Aサイトとチャットボットも提供されている(現在は中国語のみ)。

オンラインの質問回答サイト

 3月26日にガイドブックが公開されたときは4カ国語での対応だったが、3日後の今は9カ国語に広がり、さらに韓国語などの新しい言語への対応が予告されている。

このハンドブックは公開後、続々と各国語版に翻訳されている。

 このプラットフォームはアリババクラウド上で提供されており、迅速に更新されている。サーバー代の心配は必要なく、重たいファイルもどんどん置くことができる。企業が主導してこのようなオープンイノベーションを進めていくのは起業家社会の中国らしい。日本のシビックテックとは別の流れだが、いずれも市民が行政をフォローする動きといえる。