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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威は今も拡大している。入国禁止や隔離といった対策をとる国や都市は増え続けている。そんな中、中国の医師たちが「パンデミックを抑えるのは互いを避けることではなく、協⼒し合うこと」とのメッセージを込めたハンドブックを公開するなど、世界各国の有志が手を取り合い、この危機を乗り越えるオープンイノベーションを進めている。

 「東京都公式の新型コロナ対策サイトはオープンソースで作られた!」や「新型コロナで広がるオープンソース運動は日本人の働き方を変えるか」でも書いてきた通り、有志による新型コロナウイルス感染症対策サイトは40地域超に広がっている。地域ごとの詳細なデータを集めるシステムとは別に、日本全体をまとめたダッシュボードも公開され、アップデートが進んでいる。厚生労働省などがプレスリリースなどで発表する資料を、コンピューターが読み取れる形に加工するプログラムを開発し、データをオープンデータ化して再提供するなど、追加の開発は今も続いている。

各都道府県の状況をまとめたダッシュボード。東京都のサイトと同じくオープンソースでCode for Japanが開発している

「互いに避けることではなく、協力し合うこと」をハンドブックに

 こうした自発的で互助的な動きは日本だけではない。最初にCOVID-19のまん延に見舞われた中国では、アリババ集団の創業者であるジャック・マー氏の財団を通じて、感染者を受け入れた病院の医師たちが対応方法をまとめ、各国の言語で公開した。

日本語を含む各国の言語で公開されている新型コロナウイルス感染症対策ハンドブック

 浙江省はアリババ集団のお膝元だ。中国各地を旅する商人が多いことから、COVID-19が最初に広がった湖北省に次ぐ感染拡大に見舞われた。浙江大学医学院付属第一病院は感染拡大の初期から、数多くの重症患者が運び込まれる病院として対応を迫られた。

 同病院の医師たちが臨床経験から対応策をまとめたのが「新型コロナウイルス感染症対策ハンドブック」だ。同ハンドブックのまえがきには、編集長を務めた浙江大学医学院付属第一病院の梁廷波教授が以下のメッセージを寄せている。

 これまでの約50日間で、当院は確定診断された104名の患者の治療に当たりました。そのうち、重症、危篤患者は78名でした。医療スタッフは非常に大きなストレスと危険の中で、医療スタッフ感染ゼロ、感染患者の診断見落としゼロ、危篤患者死亡ゼロという3つの奇跡を成し遂げました。

 これはまさに奇跡であり、宝です。新たな疫病に最も早く襲われた中国では、隔離や診断・治療、防護や回復ケアまですべてがゼロからのスタートでしたが、このハンドブックを出版することで、この特殊な戦場で戦っている他の国々の医師や看護師が私たちの経験から多くを学び、わたしたちと同じように手探りで対処せずにすむことを願っています。

 このハンドブックは感染症のプロが医療関係者向けに「COVID-19の感染症対策はどう進めるべきか」についてまとめたものだ。消毒の方法、重症・軽症の見分け方、症状を和らげるための投薬治療、危機のメンテナンスなどについて、経験を基に具体的に記されている。

 ただ、我々のような一般人が読んでも、「感染症対策とは何か」を理解することができる。今回のハンドブックは、今まさに感染症対策委員会を立ち上げようとしている多くの自治体に貴重なノウハウを提供してくれる点で、すばらしいものだといえる。

ハンドブックに記された、感染症対策に当たるスタッフの防護用品着脱プロセス
作業中に誤ってウイルスに暴露してしまったスタッフの対策フロー