日本でのオープンソースは「ボランティア、非営利、非商用」というくくりで語られることが多い。だが、実際には世界の多くの企業がビジネスとしてオープンソースを戦略的に採用しており、大成功も多い。

 例えば米Dockerは2021年3月にシリーズBの一部としてTribe Capitalから2300万ドルの資金を調達し、中国PingCAPは、2020年11月にシリーズD全体で2億7000万ドルの資金調達を終えた。DockerもPingCAPの主力ソフトTiDBもオープンソースで、ソースコードは誰でも入手できる。自分たちの環境で自前のエンジニアが動かせば、外部に払う費用は発生しない。一方でDockerもTiDBも、大規模で信頼性が要求されるシステムをつくるためにも便利なソフトウエアなので、「専門家に環境を含めて用意してもらい、対価を払う」というビジネスモデルが十分に成立する。

オープンソースによる信頼の構築

 専門家に対価を払ってサービスを受けるときに、専門家が使うソフトウエアが、外部の検証を受けていない独占されているソフトウエアと、世界中が開発に参加し、ソースコードやバグ報告とその対応などが多くの人の目にさらされているソフトウエアとでは、どちらが有利なのかは分かりやすい話だ。サービスに使うソフトウエアでオープンソースのものを使うのは、信頼性確保の有力な方法なのである。

 NTTコミュニケーションズが提供しているクラウドサービスは、かつては自前のソフトウエアで提供されていた。しかし、次の段階でOpenStackというオープンソースのソフトウエア群にNTTコミュニケーション独自のソフトウエアを加えたものに変わった。その後、OpenStackのオープンソースソフトウエア開発に、NTTコミュニケーションズの社員たちが関わることになって現在に至っている。

 彼らのサイトで経緯が説明されている(リンク)が、OpenStackのコミュニティーが大きくなり、ソフトウエアの開発速度や修正速度が上がったことで、そのコミュニティーから外れたところで自分たちだけで作っている独自機能を毎回対応させるよりも、コミュニティーの中に組み込んで全体を進化させたほうが開発力の効率的な使い方になったようだ。また、積極的に開発に関わることで、NTTコミュニケーションズから、OpenStackプロジェクトのコミッター(様々な人から提供される修正案を、本体に取り込むか決める管理者の一人)に選ばれることが可能になり、結果としてNTTコミュニケーションズが提供するクラウドサービスの信頼性を上げることにもつながったという。

 「優れたソフトウエアを構築することで外部からの信頼を獲得し、その信頼性を付加価値として、サービスにお金を払ってもらう」ことはビジネスの王道で、それはオープンソースでも変わらない。

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