しかし、今でも多くの自治体のデータは、星1つのオープンデータ、つまりコンピューターから読み取りづらい形で発表されている。エンジニアたちはOCR(文字認識)や、時には改めて手入力するなどして対応している。

 データの取得についてもエンジニア同士は助け合って様々な機能を開発していて、一度読みやすくしたデータを改めて他人に向けて提供している。東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトは、都のオープンデータカタログサイトからデータを引き出しているため、他のサイトで別の使い方をすることができる。

 オープンデータ化は、自治体が今後、どう技術と向き合っていくかの1つの方向性となるだろう。機械が読みやすい形でデータを公開することは、Code for Japanのようなシビックテック活動、つまり有志が行政を補完する活動を助ける。

「シビックテック」は日本の働き方が変わっていくきっかけになるか

 広島銀行に勤めている武村達也さんは、東京都のサイトを基に広島版を自分で開発して公開した。

広島版を公開した際の、武村さんのFacebookへの書き込み
広島版を公開した際の、武村さんのFacebookへの書き込み

 武村さんがプログラミングに取り組み始めたのはここ4~5年の話だ。広島銀行か広島県のイノベーション推進課に出向した際、スタートアップやハッカソンなどの文化を学ぶために、自分でプログラムを組んでアプリケーションを公開する取り組みを始めた。様々な海外イベントで筆者ともよく会う。武村さんのような「問題点を自分事と捉え、手を動かして解決する」アプローチは、職業としてのエンジニアを超えて広がっていると感じる。

 誰でも当事者になることができ、関心がある問題には自分自身でコミットし、解決する仕組みを自分で作り出す行動は、フルタイムのエンジニアに限ったものではない。新型コロナウイルス対策の三重県版のサイトは、地元の高等専門学校生の有志が協力して開発している。

 今回の新型コロナウイルスの騒動は、リモートワークという形で多くの人たちが「これまでと違う働き方」をするきっかけになった。リモートワークだけでなく、オープンソースを背景にしたシビックテック活動も、広義には「仕事の形が変わっていく1つの象徴」と筆者は感じている。

(写真:PIXTA)
(写真:PIXTA)

 エンジニアによるオープンソースソフトの共同開発などの活動は長く続けられてきた。パソコン通信の時代から、インターネットが大衆化した1990年代後半、「自分たちが使うソフトは、自分たちが構造を理解できて、不具合を自分たちで修正して公開できる、ソースコードが公開されたオープンソースのものであってほしい」という運動が活性化し、社会を大きく塗り替えた。

 今のインターネットサーバーのほとんどは、オープンソースのソフトを基盤に動いている。多くの人が使っているスマートフォンに関しても、「Android」のベースになっている「Linux」や、米アップルのスマートフォン「iPhone」シリーズに搭載されている「iOS」のベースである「Darwin」もオープンソースだ。米グーグルも米フェイスブックもオープンソースの文化を背景に世の中に登場してきた企業だ。こうした文化はイノベーションに欠かせないと、筆者は強く信じている。

 多くの人がインターネットによって自分たちの仕事や生活を守り、技術を通じて社会にコミットして未来をつくる。このような活動は日本社会のみならず世界にとっても1つの希望ではないだろうか。

この記事はシリーズ「「世界の工場」の明日」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。