もちろんすべてが順調というわけではない。例えば、ボランティアベースのサイトが公開された後に、同じ目的の自治体公式サイトが登場して、一方の成果物が無駄になるといったことがある。また、作りかけのまま放置されるサービスも出てくるだろう。

 だが、多少の無駄があっても、先に手を動かして成果物を出すアプローチの方が、結局は早くて無駄のない成果物ができる。調整や計画策定にかかるオーバーヘッド(処理に要する時間)が思ったよりも大きいことは、いくつかのオープンソースプロジェクトで証明されている。

エンジニアたちの活動を後押しするオープンデータ

 東京都のために開発されたプログラムが、これだけ短期間で多くの地域に広がっているのは、このシステムがオープンデータを想定して作られているからだ。

 オープンデータとは「データに誰でもアクセスでき、コンピューターで自由に分析できること」を指す。発表したデータがコンピューターで読まれる対象になることまで考えている自治体はまだ少なく、オープンデータの取り組みは今もまだ発展途上だ。

 自治体からのデータの多くはプレスリリースや記者会見、白書などで発表されるが、その形だと「前回の発表から何が変わったか」「他の自治体と比べてどうか」などのデータの分析は、データを読み取る人間がやらなければならない。

 それに対して「新型コロナウイルス感染の疑いで検査を受けた人が何人、うち陽性と判定された人が何人、治癒した人が何人」といったように、決まった形式のデータをインターネット上に置いてくれれば、サーバーから自動で取得しにいき、グラフなどの見やすい形で表示することができる。「患者が大幅に増えたらTwitterに告知」などの追加機能も、エンジニアの側で作り込むことができる。また、現在のデータの見せ方に不満がある人は、新しい見せ方のプログラムを開発して公開することもできる。

 自治体からのプレスリリースやそれを基にしたメディアの報道では、作為的なデータの見せ方やグラフの作り方がよく話題になるが、オープンデータはそうした問題に対する回答の1つだ。さらには、「メディアなどに解釈してもらうのではなく、自分でデータを見て判断する」という行動を広めることにも役立つ。

 インターネットの仕組みであるWWW(ワールドワイドウェブ)を開発したティム・バーナーズ・リーは、オープンデータについて5段階に分けて評価している。以下は、★が増えるほど使いやすいデータを意味する。

★ データがオープンライセンスでWebに公開されている。画像でもPDFでも非公開よりは良い
★★ 構造化データが公開されている。画像のスキャンよりExcel
★★★ 特定のアプリケーション以外でも読める、非独占の形式で公開されている。ExcelよりCSV
★★★★ データにURIがついていて、直接リンクでき、コンピューターで読める
★★★★★ 4つ星に加えて、そのデータが何であるかの文脈もリンクされている

 東京都はこれまで、Code for Japanなどのエンジニアたちと連携を重ねてきたこともあり、オープンデータ化したデータを多く用意し、オープンデータカタログサイトとして公開している。

東京都のオープンデータカタログサイト。このデータを使ったアイデアソンも多く行われている
東京都のオープンデータカタログサイト。このデータを使ったアイデアソンも多く行われている

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