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 東京都の新型コロナウイルス対策サイトは今もアップデートを続けている。冒頭のサイトの写真は、3月4日に公開された直後のもので、その後もさまざまな機能の追加や整理が行われている。

 またコミュニティーとしてエンジニアたちが集まることで、新しいシステムも続々とリリースされている。たとえば同サイトのコードは、他の自治体向けに提供が始まっている。東京都と同じフォーマットでデータを公開する自治体であれば、同様のサイトをプログラマーなしで作ることができる。すでに有志の手による北海道版、神奈川県版のシステムが公開された(神奈川県版はその後、自治体側が東京都のコードを使った公式版を公開したことにより、現在はクローズ)。もちろん東京都と違って「⾃治体の公式」ではなくても、機能は変わらない。

 改変版のプログラムを書く人もいれば、「インストールのやり方」のようなマニュアルを書く人もいる。今回の件で参加者が増えたので、「最初に始めるには」といったガイドをブログで書く人も出てきた。

 3月9日には、総務省、経済産業省とCode for Japanとの連携で、一般企業が公開している新型コロナウイルス問題への支援策(例えば、自宅学習のために通常は有料で販売している教材ビデオを無償公開するなど)をまとめたサイト「民間支援情報ナビ」が公開された。

民間支援情報ナビ

 この民間支援情報ナビの開発をリードしたのは、福井県鯖江市のCode for Sabaeの中心人物である福野泰介さんだ。「Code for ×(地域名)」という形で、テクノロジーを使った社会貢献をする団体は現在、国内に79ある。こうしたコミュニティーの広がりをCode for Japanでは「ブリゲード(消防団)」と呼んでいる。フランチャイズなどではなく、Code for Japanを含めて各組織は対等だ。

 オープンソースの面白い仕組みは世界のどこにでもある。難しいのは、既存のビジネスや社会の仕組みと「違う」ことだ。「ハッカーは正しいことを雑にやる。スーツどもは間違ったことを綿密にやる」というハッカー界に古くから伝わる金言がある。

 役所は何よりも「綿密さ」が要求される組織だ。Code for Japanのような組織(かどうかも定義しづらいもの)と一緒に何かをやることは難しい。仕様書の通りに言われたものを言われた通り作るわけではなく、入札のような仕組みもなじまない。

まずは正しいことを雑にやってみる

 ほとんどの社会の仕組みは、関わる人であれ期間であれ、「何かを区切る」「何かを限定する」「でき上がる前に計画で判断する」ことで成立している。だから、情報が少ないのに権限はある人が判断して失敗するといったことがよく起こる。オープンソースは真逆だ。

 東京都はCode for Japanと長くコラボレーションをして信頼関係を築いてきた。今回、オープンソースから生まれた成果物を迅速に「公式」としたことが、東京都最大の功績だ。「公式」としたことで皆が注目し、医療関係者や報道関係者などからも信頼できる情報として認識される。

 現在、東京都の副知事には元ヤフー社長の宮坂学氏が就いている。宮坂氏は、今回のオープンソースシステムを各自治体が使えるように無償公開したことについて、後押しするツイートをしている。Code for Japanのボランティアエンジニアたちが、これまでも行政を巻き込んだ活動をしてきたこと、そして宮坂氏のように、自治体の中にエンジニアとの付き合い方をよく知る人がいたことが、今回のコラボレーションを助けた。

 Code for Japanの関さんをはじめ、関係者に何人か旧知の人たちはいるが、筆者自身は今回のプロジェクトに関わっていない。しかし、東京都のサイトと作られた過程を見たときに、自分もこの流れに貢献したくなった。

 筆者は、今回のようなオープンソースのやり方がそれまでの社会の仕組みと「違う」ことが、非常に大事だと思っている。オープンソースのやり方(課題があったらそれを自分で解決する、課題をオープンにして誰でもコミットできるようにする)に、既存の社会が合わせるほうが、世の中は良くなると思っている。世の中にはまだまだ伸びしろがある。そして、ものを作る人や、どうやって作っているかに興味を持つ人が増えれば増えるほど、社会は良くなると考えている。まず正しいことを雑にやってみること。それが世界を良くしていくと信じている。