全2579文字

 「製造業」と呼ばれるように、メーカーはものをつくることで利益を上げる構造になっている。大手製造業は「製造」が利益の核で、製造の効率化のために多くのリソースが割かれる一方、新製品や新技術の開発はコストを度外視して進められることもある。

 一方、ハードウエアスタートアップにとっては、研究開発そのものが仕事だ。日本には優れた製造業が数多くあるが、研究開発を主たる業務としているハードウエアスタートアップが、協力してくれる企業を探そうとすると意外に難しい。そんな中で、東京都墨田区にある浜野製作所はハードウエアスタートアップにとって、一種の駆け込み寺になっている。

スタートアップの駆け込み寺になっている東京都墨田区の浜野製作所。「天皇陛下行幸記念」の碑がある

 筆者が手掛けている仕事は、DIYやハードウエアスタートアップ、ハードウエアの研究開発に関連するものが多い。そうするとよく「製造業なんですね」と言われる。ところが、製造業のビジネスモデルと、ハードウエアスタートアップのビジネスモデルは大きく違う。

 製造業は「製造」で利益を上げる。1万個つくったものを次のロットで10万個つくるとき、品質を向上させてもっと安くつくるにはどうすればいいか。研究開発ももちろん重要だが、こうした「ものをつくる」部分での知見と改善が必要になってくる。そして、日本には時間をかけて成長した巨大な製造業があり、膨大な蓄積がある。

 ハードウエアスタートアップのビジネスモデルは巨大な製造業とは異なる。成長した後はともかく、黎明(れいめい)期のスタートアップはそれほど量産をしない。成長してシェアを確保し、大規模であることが利益につながるような存在まで大きくなれば別だが、黎明期に原価に左右されるような製品をつくっていては、規模の小さいスタートアップは苦しくなるばかりだ。

 スタートアップの製品の多くは「これまで市場にないハードウエア」だ。その製品で会社を成長させる利益を上げ続けなければならない。そうした製品の研究開発とテストマーケティングを両立させながら会社を成長させるのがハードウエアスタートアップのビジネスモデルである。

 大量生産には分業化してそれぞれの効率を最大限に追い求めることが向いているが、世の中にないものをつくって利益を出すためにはアイデアをすぐ形にでき、「ゼロイチ」の試行錯誤を繰り返すことができる体制が向いている。ものづくりに関係する様々な専門職がひとまとめになっていて、かつ素人が相手でも話を聞いてくれて、連携して動いてくれることが望ましい。