オープンソースのソフトウエアの特長は世界中どこでも利用できる点にある。日本人のまつもとゆきひろ氏が中心となって開発したプログラミング言語のRubyは世界中で使われている。開発コミュニティーの多くは海外の人たちで、Rubyの利用者を大きく増やしたフレームワーク(目的のアプリケーションに使われる機能をあらかじめ作ってあるソフトウエア)Ruby on Railsは米国のエンジニアが中心となって開発された。
有名なオープンソース OSであるLinuxの中核部分のカーネルはインターネットを支えるほとんどのサーバーやスマートフォン用のAndroidで使われている。開発者のリーナス・トーバルズ氏(フィンランド人)が今も開発コミュニティーの中心だ。Linux全体はとても巨大なので、日本からも中国からもLinuxを基に自分たちの事情に合わせて使いやすくした多くのディストリビューションが出ている。
オープンソースソフトウエアの成功を図る指標の1つは、Linuxなどのようにもともとの作者や開発の中心が意識されなくなるぐらい広く普及、様々な方向の発展を遂げることかもしれない。
多く使われている中国製オープンソースソフトウエア
中国人が中心になって開発したオープンソースソフトウエアも多い。JavaScriptのフレームワークであるVue.jsでは、日本でも単独の勉強会が開かれ、解説本が何冊も出ている。
オープンソースソフトウエアのほとんどは、解説本を必要とするような多機能で複雑なものではなく、シンプルなものである。オープンソースソフトウエアの基盤になっているUnix OSでは機能をファイル単位で実現し、多くのシンプルなファイルを組み合わせて複雑な機能を実現するやり方が好まれる。Microsoft Officeのような巨大なソフトがあるのでなく「文字量を数える」「画像を文書に挿入する」「画像のサイズを変更する」などでそれぞれ別々のソフトウエアを開発するような形だ。分散型開発はインターネットとも相性が良く、GitHubのような共同開発サービスがそれをさらに後押しする。
シンプルなソフトウエアになると中国発のオープンソースソフトウエアはさらに多くなる。米アップルが2014年に発表し、2015年からオープンソースに移行したプログラミング言語Swiftなど、比較的新しい環境では多くのソフトウエアを中国人プログラマーが公開し、日本でも広く使われている。
Facebookで開発されオープンソースソフトウエアとして公開されているフレームワークReactで作られたUIツールキットのAntDesignは、名称からも分かる通り中国アリババ集団が開発しているオープンソースUIツールキットである。先日事故で1日だけGitHub上で確認できなくなったとき、日本の多くのUIエンジニアが困惑していることをSNSに上げていた。もちろん日本に限らず、世界中のエンジニアからもコメントが寄せられた。
そもそもRubyもLinuxも、開発者が日本人やフィンランド人であることが意識されずに世界中で使われているように、ソースコードを読むことでコミュニケーションできるオープンソースソフトウエアの世界では、開発者がどこの国の出身かは意識されない。
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