技術開発について、先進国の後追いや、はやり物への過度の集中が多いといわれる中国。その方向性は成熟とともに変わりつつある。

開発ボードのアーリーアダプターが多い日本、少ない中国

 筆者の本業はIoT開発ボードに関する国際事業開発なので、新しい開発ボードを常に追いかけている。実は、新規の開発ボードについては世界で最初に人気に火が付くのはだいたい日本の開発者コミュニティーで、日本のコミュニティーで評価が定まったものが次に米国、その後中国で人気になることが多い。日本には趣味のDIY開発者が多いが、海外では開発ボードは仕事で必要に迫られて使うものなので、ある程度の評価が定まり、活用事例が広まらないと大きな売り上げにつながらない。

 ここ数年を代表するヒットの1つと言えるのが、深圳のM5Stackの開発ボードだ。業界標準の1つであるArduinoシリーズの開発環境を使うことができ、かつArduinoボードが標準ではサポートしていないWi-FiやBluetoothといった通信機能を最初から備えているマイコンチップ、ESP32シリーズをCPUに採用しており、IoTのプロトタイプ用として快進撃を続けている。

新しいIoT用の開発ボードとして人気のM5Stackシリーズ
新しいIoT用の開発ボードとして人気のM5Stackシリーズ
[画像のクリックで拡大表示]

 M5Stackについては、以前も「国境を越えるオープンイノベーション アマゾンと連携する深圳企業」で紹介した。

M5Stack CEOのジミー・ライ。彼自身が「メイカー」である
M5Stack CEOのジミー・ライ。彼自身が「メイカー」である

 手堅い仕様のボードとはいえ、開発ボードに見えない見た目をしていることもあり、最初に人気が出たのはアーリーアダプターの多い日本の開発者コミュニティーの間でだった。発売初年度は日本でだけ頻繁に開発者コミュニティーのイベントが開かれるほどの盛り上がりを見せ、M5Stack CEOのジミー・ライは日本の開発者と良い関係を築いている。

2019年8月に日本で開かれたユーザーミートアップで、日本のユーザーたちに囲まれるCEOのジミー(右)(写真提供:M5Stack)
2019年8月に日本で開かれたユーザーミートアップで、日本のユーザーたちに囲まれるCEOのジミー(右)(写真提供:M5Stack)

 そのM5Stackシリーズは2020年欧米でもブレークし、現在は少しずつ中国国内にも広がっている。

 「まだ中国国内の売り上げは全体の10%ぐらいだが、増え続けている。手を動かして試行錯誤することを好むエンジニアが、中国にも増え始めているのを感じている」。ジミーはこう語る。

2020年にはマイクロソフト深圳オフィスで働くハードウエアエンジニアたちがM5Stackのオフィスを訪問。中国でもユーザーが増え始めた
2020年にはマイクロソフト深圳オフィスで働くハードウエアエンジニアたちがM5Stackのオフィスを訪問。中国でもユーザーが増え始めた

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1579文字 / 全文2462文字

日経ビジネス電子版有料会員になると…

特集、人気コラムなどすべてのコンテンツが読み放題

ウェビナー【日経ビジネスLIVE】にも参加し放題

日経ビジネス最新号、10年分のバックナンバーが読み放題

この記事はシリーズ「「世界の工場」の明日」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。