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 2020年4月に日本の小中学校でもプログラミング教育が必修化される。ただ「2020年度から必修化」は、ややスローガン先行で実際はプログラミングという教科ができるわけではない。

 算数や総合学習などの時間にプログラミングが題材になり、どの学年のどこの教科でどれぐらいの分量になるかは各学校の判断という状況だ。「プログラミング」という行為についても範囲が広く、紙と鉛筆を使って「パターン」や「ループ」といったプログラミングの仕組みを理解させることも、この範囲に含まれている。

 中国などアジアの各国でも、日本のプログラミング教育と通じるSTEM(科学、技術、工学、数学)教育やメイカー教育が急速に進んできている。

マレーシア・ペナンのサイエンスフェアでは州知事があいさつした。ペナンはメイカー教育に注力している

 メイカー教育(ここではコンピューターに関する新しい教育を「メイカー教育」と総称する)に各国が力を入れているのは以下の2つの理由からだ。

  1. 石油などの化石燃料や自動車などの機械と同様に、インターネットやコンピューターも現代社会を支える重要なツールになっているため。
  2. インターネットやコンピューターの影響により、自分でアイデアを具現化してビジネスにしていく、起業家やエンジニアの役割が大きくなってきているため。

 1に関しては題材は異なっても「教える」ことには変わりない。一方、2は「学生たちが自分で解くべき課題を発見し、解き方を考えて実現する」という、これまで学校教育が提供してきたものとは別の仕組みが必要になるため、各国とも学校外の組織とも協調して、試行錯誤している。

「できるところから進める」マレーシア・ペナン州のメイカー教育

 アンダマン海に浮かぶペナン島はヤシの木が並ぶビーチが広がり、「東洋の真珠」と呼ばれる美しいリゾート地だが、古くから貿易で栄えた商売の街でもある。現在の人口はペナン州全体で174万人。米インテルや米モトローラなどの設計センターや電子機器工場が建ち並び、マレーシアでもっとも経済成長している州だ。こうした背景もあり、メイカー教育のような新しい教育の取り組みも盛んだ。

 ペナン州のメイカー教育は、学校外の組織も巻き込んで、できるところから始めていこうというアプローチだ。この点が日本と大きく異なる。

 メイカー教育に力を入れているペナンでは、毎年数万人が集まる「ペナン・インターナショナル・サイエンス・フェア」が開かれている(2019年は11月2~3日に開催)。主催はNPOのペナン・サイエンス・クラスター。インテルなど半導体産業を中心とした各社がペナン・サイエンス・クラスターを支援している。

 サイエンス・クラスターは小中学校の教師向けにメイカー教育の方法を指南する常設のトレーニングセンターを持っているほか、メイカー教育用の教科書とマイコンボードなどの教材を提供している。学校の先生が通う学校というわけだ。

 サイエンス・クラスターがメンターシップや教育用ハードウエアを提供している学校は271校、プログラミングを習っている人は19年時点で8万人に及ぶ。ペナン州政府は20年に10万人に増やすビジョンを描く。

ペナン・サイエンス・クラスターでコンピューター教育についての指導を受けるペナン州の教師たち