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二手に分かれたトランプ側の選挙不正を暴く動き

 今回の選挙不正に関連して、ジュリアーニ元ニューヨーク市長はトランプ陣営の弁護団を率いる立場から、11月末には220人の証人がいると発表した。その数は今も増えている。

 一方、不正を指摘されたことを名誉毀損だとして逆に訴える者が出てきたほか、トランプ陣営に立とうとする証人やコンピューターシステム分析の専門家に対する脅迫の話も増えている。12月20日には、ウィスコンシン州最高裁の前判事が、ペンシルベニア州で不正投票を訴えていたトランプ陣営の女性弁護士などがメールや電話などで脅迫を受けて仕事から外れたケースがあったことを暴露した。彼は裁判官にも脅迫が及んでいると指摘している。

 また、トランプ陣営にとって有効な動きをしていたシドニー・パウエル弁護士を訴えたり、脅迫したりする動きも出ているため、彼女自身も弁護士を立てて自分を守る訴訟を始めた。

 事態は、選挙結果がどうなるかとは別に、双方に加担する人々の感情が高ぶっていることで悪化の一途をたどっている。

 このため、自らも米連邦捜査局(FBI)捜査官による脅迫から家族を守るために罪を認めさせられたフリン元大統領補佐官は、現状を憂えて戒厳令の施行を訴えている。彼の主張は暴動の発生まで視野に入れているが、彼は、自身の経験から米国の司法やFBI、米中央情報局(CIA)などが何をするか信用できない懸念がある、とも語っている。

 パウエル弁護士は彼を擁護した立場でもあることから、2人の意見は一致しており、今後も大統領選挙の不正を暴いていく場合には命懸けだとの発想を持っているようだ。なお、2人は不正の背景に中国が絡んでいるとも言っている。

 これに対してジュリアーニ氏は、戒厳令の発動は過激すぎると考えているのか、また彼女への脅迫的な行動が自陣営に及ぶのを恐れているのか、パウエル弁護士は自分たちとは一切関係ないとのコメントを出した。彼の下で働くエリス弁護士も、トランプ陣営は戒厳令のような暴力的な手を使わずとも勝てるとの意見を述べている。

 このため、バイデン陣営の選挙不正を訴える動きは、ジュリアーニ氏らのトランプ陣営と、パウエル弁護士の独自活動との二手に分かれている。しかし、トランプ大統領が双方と連絡を取り合っているのは当然であろう。

とても不可解な2つの事象

 テキサス州の司法長官が17州の支持を得て連邦最高裁に「ジョージア、ミシガン、ペンシルべニア、ウィスコンシン州の選挙ルールの改正は憲法違反」と訴えた件は、「テキサス州には訴訟権限がない」として却下された。その際、ロバーツ主席最高裁判事が他の判事を集めて「ここでトランプ陣営の主張を認めれば暴動が起きる」と訴えを却下するよう怒鳴りつけていたことが裁判所勤務者によってリークされた。

 これに対して、連邦最高裁は、コロナ禍により全ての審議はリモートで行われているので判事は裁判所に来ていない、との声明を出した。このリークは作り話だということである。

 筆者は、故スカリア最高裁判事に、「最高裁の判決はここ以外では決定されない」との説明を受けたことがある。つまり、連邦最高裁の建物からの案件の持ち出しは禁止だということだ。筆者の認識では米国はかたくなにルールを守るので、リーク者の意見は必ずしも間違ってはいないという気がする。そもそも、ここまでサイバーアタックが問題となっている米国で、米国の運命を変えるほどの審議をオンラインでやるだろうか。

 一方で、仮に裁判所内に判事が集まっていたとしても、こんな大切なことを隣に漏れるような大声で話すだろうか。また大声を上げるほど最高裁判事は感情的に不安定なのか、という疑問も残る。

 また、1月6日の選挙人投票を確認する際、仮に激戦州などでの投票を無効にするのであれば、それを12月23日までに当日の議長となるペンス副大統領に届け出る必要があるとする情報が流れた。そしてペンス副大統領はそれを合同議会に事前登録する義務がある、というのだ。これについては誰も賛成も反論もしていない。24日からはクリスマス休暇に入り、年末年始の休みを加えると、次にペンス副大統領が公式に活動するのは1月4日になり、届け出る必要があるのであればギリギリになる。

 仮に、米国でたまにあるスポット・ネクスト・ルール(当日の結果は翌々営業日から有効となる)がここでも存在していると考えると、確かに12月23日までに届け出がなければ1月6日当日の準備しかなく、これは不可能だ。しかし、そんなルールが連邦最高裁に存在するとは聞いたことがない。ただし、当然のことながら、ペンス副大統領の動静は1月6日までは秘密である。