(写真:AFP/アフロ)
(写真:AFP/アフロ)

 今回の米国大統領選挙には、もしかすると国連の選挙監視委員会が必要だったのかもしれない。そう言いたくなるような開票状況が展開されている。本稿を執筆している米国東部時間(以下同)11月4日の午後8時現在、トランプ陣営はウィスコンシン州には再集計を求め、ミシガン州には訴訟を起こす考えを示すなど、開票作業への不満を露わにしている。

 そもそも、選挙前日の11月2日、トランプ大統領が選挙当日中に勝利演説をするとの噂が流れていたが、これは大統領候補であれば準備する普通のことなので、不可思議な「フェイクニュース」だった。

 11月3日の午後6時以降、州ごとの投票終了時間到来とともに順次、開票作業が始まった直後から、ほとんどの州でバイデン候補がリードした。ただちにバイデン候補は当日中に演説をすると発表したが、午後9時には多くの州でトランプ大統領が逆転。しかし、フロリダ州とテキサス州がトランプ氏の「当選確実」といえる状況になってから実際に確定するまでに2~3時間もかかった。ちなみに、トランプ陣営はちょうど勝利を祝うパーティーを開始して、オードブルが出たところだった。

 ここで、バイデン候補は2度目の犬笛を吹いた(1度目の「犬笛」については、10月22日公開の「『犬笛戦術』で大統領選勝利を目指すバイデン陣営」を参照してほしい)。郵便投票のさらなる到着を待つ先送り策で難局を乗り切ることを狙ったものだ。

 11月4日未明、バイデン候補は「我々は勝利の軌道にいるので結果を急がず待とう」という趣旨の発言をした。開票状況で劣勢にある候補の発する言葉ではない。さすがに筆者もすべてを調べたわけではないものの、このような発言は米国の大統領選挙史上初めてのことだと思う。それほど状況と内容が不一致であった。

 その後、トランプ大統領が発言したのだが、これは47年の政治家としての経歴を持ち、経歴詐称までしてきたバイデン候補とは異なり、単純な勝利宣言といういかにも「素人」の発言だった。このため、民主党サイドからは「横暴だ」「間違いだ」との批判が出た。

 犬笛の効果は大きく、ペンシルベニア州はあいまいながら開票時間が延びることを発表。またネバダ州は5日正午まで開票状況の公表を見送ると発表し、選挙結果は長期戦の様相を呈している。また、ジョージア州とノースカロライナ州は、開票率がそれぞれ95%と92%でトランプ大統領が僅差でリードとなってから半日たった4日正午の時点でも同じ開票率のままだった。

 4日午後までに、ペンシルベニア州、同州のフィラデルフィア市、ジョージア州の知事や選挙関係者が集計の遅れを説明し、理解を求めた。郵便投票の到着の遅れなどがあるというのだ。しかし、「YouTube」で確認してもらえば分かるが、各投票所での開票作業は日本人の常識では考えられないほどいい加減なもので、ふらふらと歩き回ったり、作業テーブルの上に腰かけて話したりしている。ある映像では、ドーナツとコーヒーの差し入れでもあったのか、作業途中のまま皆どこかへ行ってしまった。

ニューヨークの百貨店は木の板で覆われていた
ニューヨークの百貨店は木の板で覆われていた

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この記事はシリーズ「酒井吉廣の「2020年米大統領選」〜トランプ再選を占う」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。