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ウォーレン候補にさらなる左傾化の可能性

 米国の民主社会主義は、資本主義と共産主義の間で生まれ、欧州で育まれた社会主義という経済原則をフランスより一歩進めて、スウェーデン、アイスランドのような形にしようというもの。経済理論という点で見れば、ソ連が失敗した共産主義の修正を目指す今の中国が左(共産主義)から右(資本主義)へ、米国民主社会主義が右(資本主義)から左(共産主義)へというベクトルになっており、どこかで理論的に一致してしまう可能性を秘める。デブラシオNY市長やサンダース上院議員が中国を脅威とは思わないと言ってきたゆえんだ。

 サンダース上院議員とは異なり、財源を明確にした法律案を出しているウォーレン上院議員は、ウクライナ問題で人気を下げているバイデン前副大統領を抜いて人気投票でトップに躍り出た。今後はバイデン氏と抜きつ抜かれつの関係になるだろう。

 ただ本選を見越せば、ウォーレン上院議員にとってサンダース票は不可欠。彼を支援する学生組織などを味方につけるために、現在よりもさらに左寄りの政策を志向する可能性は否定できない。

 2016年の大統領選でクリントン候補が負けた理由として、彼女自身の述懐や、ワシントン筋および米大手メディアの論調を受け、選挙日直前のメール問題の露呈などが挙げられることが多い。それは事実だろう。

 だが、クリントン候補がサンダース候補を味方に取り込んでいれば、人気投票で300万票の上積みが可能になり、選挙人の獲得数で本選に勝利したという見方が民主党の選挙対策メンバーの中では根強い。ウォーレン上院議員がサンダース候補を取り込まないという選択肢はほとんどあり得ないのではないだろうか。

 他の候補者にとってもサンダース票が重要なのは同じなので、米国民主社会主義は民主党の重要なテーゼとなる可能性がある。

凶悪犯罪に立ち向かう警察への対応が鍵

 トランプ大統領が2016年の選挙に当選したときの基本的な政策は米国民の安全だった。生命の安全と生活の安全の2つである。これに対峙するため、民主党の候補者は銃犯罪や不法移民(トランプ大統領は彼らを犯罪の種と考える)を取り締まる警察官にどう対処するかという点を考え始めている。典型はブティジェッジ・サウスベンド市長だろう。彼は検挙率の引き上げや犯罪率の低下の前に、現場の警察官を変えるようなルール作りが重要だと考えている。

 サンダース上院議員とオカシオコルテス下院議員が集会を開いた19日、マンハッタン・ハーレムの教会で、殉職したニューヨーク市警の警察官の追悼ミサがあった。ソロで聖歌を歌った歌手の歌唱力やその厳かさもさることながら、そこに正装用の制服を着て参列した警察官の数は周囲を圧倒した。同時に、暗黙のうちにNYというコミュニティーのために命をかけて働いていることを主張していた。

 NY市警は、黒人差別撤廃のための厳しい原則で、逆に自分たちの身の安全を脅かすデブラシオNY市長に反発している。これは、カリフォルニア州のロサンゼルス市警も同じだ。民主党の大票田である両州の最も重要な都市の、影響力のある集団がトランプ支持になり得る可能性があるのだ。

 彼らが職務を全うできる環境を維持しない限り、民主党候補者の求める世界は訪れない。それどころか、これは全米の警察官に当てはまる問題なので、大統領選挙という点での勝利を近寄せることができない。今後、民主党の候補者が、そのあたりの現実をどう消化して行動し始めるのか、見ものである。