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政策の違いが目立つ各候補者

 例えば、米国版の国民皆保険を目指す「Medicare for All」という政策案を見ても、サンダース上院議員は予算編成の仕方を工夫すれば7年後には財政が均衡すると見ているのに対して、ウォーレン上院議員はヘルスケア関連企業に課す高率の税金をその財源にするとしている。国内メディアの興味で言えば、背景にMMT(現代貨幣理論)に頼る発想があるかどうかの違いというところだろう(ウォーレン上院議員はMMTの採用は前提にしていないが、MMTのような理論を採用してでも、Medicare for Allは今やらなければならないと考えている)。

 銃規制についても、政府が買い戻すという案から購入時の身元確認の強化、現在の保有者のチェックなど、これまた意見が異なる。人種差別問題では、犯罪取り締まり制度の改正を主張する候補者もいれば、現制度の下で差別撤廃を徹底させることが重要とする候補者もいる。移民問題も、不法移民全てを平等に受け入れるべきだという発想から、移民制度の具体的な執行手続きで対応するとの意見まである。

 富の偏在にどう対応するかに至っては、億万長者のステイヤー候補がサンダース候補のアイデアを称賛、同じく起業家のヤン候補も毎月の資金提供という独自の対応策を示している。ビジネスで成功した2人の候補者がリベラルな案を示すなど従来では考えられなかった動きが出ている。

 今回の大統領予備選挙は、父ブッシュがレーガンの経済政策をブードゥー・エコノミクス(怪しげな経済学という意味)と批判した1980年の共和党の大統領予備選や、オバマ氏とヒラリー・クリントン氏の両候補でほぼ類似の政策案を抱えながら、達観すれば女性か黒人かとの選択を迫って民主党予備選を戦った2008年ような、シンプルな戦いとはなりそうにない。

 しかも、人気投票の上位3人(ウォーレン、バイデン、サンダース)を除く他の全ての候補が「選択と集中」や「大統領1期目からの問題解決」など、米国の大学院が言い出しそうな教科書通りの処方箋に依存している。これから現実の票集めに向けて政策案のチューニングがなされると思われるが、具体像は見えづらい。

サンダース色に染まるニューヨーク

 10月15日の討論会の後、MMTの導入を主張して有名になったオカシオコルテス下院議員と、米大統領のイスラエル訪問を求めたオマル下院議員の2人の民主社会主義者が大統領候補としてサンダース上院議員を推薦すると宣言した。

 これを受け、サンダース上院議員は同19日にオカシオコルテス下院議員の地元ニューヨーク(NY)市において2人で演説、心臓発作から約2週間の休養を経て、再び遊説活動に戻ると宣言した。

 ここで重要なのは、大統領候補の1人だったデブラシオNY市長の離脱後1か月でNY市がサンダース色に染まりつつあり、民主社会主義者(超リベラル)の城となる可能性が出てきた点だ。