
トランプ大統領は10月2日、ツイッターで新型コロナウイルスに感染したと公表した。74歳という高齢を考えると、いかにエネルギッシュな大統領でも不安が出てくる。米国時間2日夕方にはメリーランド州のウォルター・リード軍医療センターの「Presidential Suites」に入院し、特別室で執務を続けることになった。これはレーガン大統領以来である。
これに対し、メディアも株式市場も思いのほか落ち着いていた。一方、海外首脳からのお見舞いの中に、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長からのものがあった。災い転じて福となすということもあるかもしれない。また、トランプ大統領は米食品医薬品局(FDA)の承認しない薬も積極的に飲んでいるとのことなので、2週間後に元気に職務復帰したならば、「自分が証明した」その薬を持ち上げて、新型コロナ問題を悲観視するバイデン陣営に対して一気に攻勢に出るかもしれない。
なお、リベラルメディアは3日時点では、大統領の体調が「クリティカルな状態だ」「大統領選挙直前まで入院の可能性」などといった報道をしていたが、4日にはトランプ大統領が病院の周囲に集まっている支持者に元気な顔を見せるべく、専用車に乗って窓越しに手を振るというサービスをした。早ければ、明日か明後日にはホワイトハウスに戻る可能性が出てきているもようである。
トランプ大統領の新型コロナ感染により、大統領選挙の行方はますます見通しづらくなったが、ここでは9月29日に開かれた第1回テレビ討論会を振り返ってみたい。
米大統領選の第1回テレビ討論会はめちゃくちゃな言い争いだった。ごくわずかな保守メディアを除き、世界中のほとんどがバイデン候補の話をさえぎったトランプ大統領を批判し、討論会のあり方を問題視した。
客観的な評価をするならば「トランプ大統領のゲリラ戦法を無視しようとしたバイデン候補」という表現が妥当で、ひいき目に見てもトランプ大統領を褒めることは難しい。誰もがやり過ぎだと感じただろう。ただしバイデン候補も、あまりにしつこく発言の邪魔をするトランプ大統領を無視し切れず、逆に相手をさえぎる反撃に出たため、邪魔した割合はトランプ大統領78%、バイデン候補22%だとする調査もある。
一方、いかにトランプ大統領の人物評価が非常に低いとしても、討論会の冒頭からゲリラ戦法に出たことを、ただ彼が礼儀知らずだからだと決めつけてよいのだろうか。トランプ大統領が置かれた現在の立場から、今回の討論会での振る舞いについて考えてみたい。筆者がトランプ大統領寄りだと批判されることは覚悟している。それでも、今後の大統領選挙を見るための一助として、あえて他の人たちの評価とは異なることを書くことを承知して読んでいただければ幸いである。
トランプ大統領は討論会で何をやりたかったのか
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