第3回民主党大統領候補討論会が9月12日に開催されてから約2週間が過ぎた。米大統領選の争点は経済、移民、ヘルスケア(医療保険)、気候変動の4点に絞られつつあるが、民主党ではこの第3回討論会を境にもう1つの争点が浮上している。米国の古くて新しい問題「黒人差別」である。

 9月19日、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)と米ブルッキングス研究所は民主党と共和党に党員登録している人々を対象にしたアンケート調査を発表した(https://www.wsj.com/graphics/red-economy-blue-economy/)。このデータは、筆者も米国での大統領選挙のための分析で利用したことがある。米国では信頼のおける実態調査の1つだ。

 本稿では、このデータから描かれる民主・共和両党の姿を前提に、第3回討論会でブッカー上院議員が犯罪取り締まり問題で口火を切ったアフリカ系アメリカ人(以下、黒人と呼ぶ)への実質的な差別対策を考える。

黒人に対する警官の過度な取り締まりを批判したコリー・ブッカー上院議員(写真:ロイター/アフロ)
黒人に対する警官の過度な取り締まりを批判したコリー・ブッカー上院議員(写真:ロイター/アフロ)

米国に存在する3つの分断

 日本人は一般的に「民主党は労働者・低所得者のための政党、共和党は資本家・高所得者のための政党」というイメージを持っている。

 だが、シリコンバレーを抱えるカリフォルニア州、シアトルのあるワシントン州、リベラルな知識層が多いといわれる東北部諸州を基盤とする民主党には、基本的に富裕層が多いという点を忘れがちだ。つまり、民主党は富裕層と共に黒人や白人の低所得者層を党員として抱えており、民主党内で富裕層と低所得者・貧困層とが分かれていることに思いが至らない。

 しかも、民主党がこの10年間(2008年から2018年まで)でさらに高学歴・高所得層のための党になっており、黒人や他の低所得者層と裕福な民主党員との間で党内の格差も広がっている。

 米国社会には、①白人と黒人の分断、②高所得者と低所得者(=高学歴と低学歴)の分断、③民主党内の裕福な白人層と黒人の分断――という3つの分断があるのだ。

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